episode.2






男は苦手だ。

まず人見知りが激しい私に異性と仲良くしろと言うのが無理な話だと思う。


逆に言うと、打ち解ければ男女関係なく仲良くできるのだが、それでも見ず知らずの男と打ち解けるのはかなり難しい。

2人きりなんてもってのほかだ。





放課後、美術室の扉を開きかけて思わず手を止める。


誰か、部員じゃない誰かがいる。



「(…男子、だ)」



それだけでぎょっとして後退る。
勿論、足音は立てないようにそっと。

それから静かに中を覗くと水道のところに立っているその男子はやっぱり見間違いではなかった。




どうしよう、中に入れない。


だって中に入ったら絶対こっち見る。そんな、視線に耐えられないよ。



「…」


よし、時間をずらそう。



図書室で調べものしてたって言えば良い。言い訳なんていくらでもある、伊達に部長になれるほど真面目な子で振る舞ってない。


心に決めて、時間をずらすために逃げ出した。





――――…30分経って。


改めて部室に行くとあの男子の姿はなく、中で部員が一ヶ所に集まっていた。



「どうしたの?」

「あ、律」



律、と私の名前を読んだのは同級生だ。



「これ、律じゃない?」

「え、何…?」





部員の隙間から指差されたそれを見て、吃驚した。



「誰が書いたの、これ」




うちの部員にはいないくらい高度な技術で描かれた絵。

花壇の前に座り込んでいる女子生徒の後ろ姿。


同級生が私だと言ったのは、多分この生徒のことだ。


今日こそ団子にしてあるものの、普段は大体ポニーテールだ。しかも特徴あるくせ毛に、かなりのロング。


その条件が揃っていたのがこの絵の女子なのである。




「誰が描いたか分かんないんだよね」

「先生の知り合いとかじゃないの?」

「えー違うでしょ」




……まさか、あの男子が描いたのか。


人見知りで目を見て話せないのが災いしてかほとんど顔が覚えられないのもあって、あの男子が何年なのかすら分からない。




「(誰、だったんだろう…)」






2013 03 05







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