「私の気のせいでなければ、多分…好意持たれてるんだけど」
「それを元彼に話すあたり、若は酷い」
「転入日にやらかしたせいでその手の話を相談できる人がいないんだから仕方ないでしょ」
「傷つくわあ」
「嘘つけ」
嘘か本当かくらい区別つくわ。
――――保健室にて。
誰もいないことをいいことに梓の隣に椅子を持ってきて、勝手に冷蔵庫をあける。お、はちみつレモン発見。
放課後の保健室。しかも最終下校時刻ぎりぎりだから誰もいない。
こんなぎりぎりまで残ったの初めてだわ。
「ね、どうしよう」
横から見上げると、くしゃと頭を撫でられた。むむ、子ども扱いか。
けど横目に見下ろす梓は子どもを見る目なんかじゃなくてそれを言いそうになった口を閉じる。
「ええやん、好きなんやろ?」
「好き」
「何があかんの?」
「……」
何がって、言われても。
私“以外”を、好きになるのが…嫌だ。
私以外……って、私、に行為を持たれてるって言ってんのにどう考えてんだ私。
混乱し始めた頭を振る。
落ち着け、何テンパってるんだ。
「若?」
「……ごめん…」
なんだこの違和感。
私が、好かれてるんだよね?
臨也、臨也の感情の動きなんて分かる。――――分かる。
「若…?若、」
「ごめん、梓ちょっと今、変…」
なんだこの違和感。
この、この状況に今更ながらに違和感を感じる。
私が保健医じゃないから、変なのか。
「好かれて嬉しいけど、困ってる、のかも」
14.最終下校のチャイムが鳴った。
保健医の私は、どこ?
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