15.周りの騒音が耳に入らない。

















「わかちゃんわかちゃん。今日も可愛いねー、あ、リップ変えた?最近出た新商品だ。発色良いよね、似合ってるよ。いつも思うんだけどわかちゃんの持ち物結構高いよね。あ、まさかバイト?いっけないんだーっわかちゃん許可取ってないでしょ?バレたら反省文だ。でも可愛いからいいや、謹慎とかなったらシャレにならないね。そう言えば何でわかちゃん私服お淑やか清楚系ばっかりなの?それも良いんだけどねー可愛いし似合ってる。わかちゃんは絶対肩出しとか好き でしょ?足見せるの嫌いだから下はデニムだろう けど。しかも足の形の分からないブーツカットの 方。今はスキニーの方が流行ってるのにー。マキシ丈ワンピとか…そうだなぁ、森ガールとかよく 似合うと思うんだよね。あ、カッターシャツ風ワンピ見たんだ、あれエロいよね。わかちゃん家で の露出とか気にしなさそうだし、俺買ってくるか ら家で着て見てよ。なんなら俺のカッター着る? そっちのほうがもっとエロいかも。あー…やっぱ りわかちゃ
んと服買いに行きた いなぁ、メンズ物の趣味って俺と一緒なんだよね、しかもメンズ限定でセンス良いし?あ、何で 知ってるか?俺に知らないことはないんだよ。 で、俺はわかちゃんに似合う服を買うと。あ、お 金は気にしなくて良いよ俺が払うから。デートで 彼女にお金払わせるような最低な奴じゃないからね。俺としてはわかちゃんと手を繋げて、あわよくば抱き締めれば万々歳だしさ。俺の選んだ服着てくれたらもう幸せすぎて死ねるね。」



マシンガントークもいい加減にしろ。

まずバイトなんかしてないし。



殴りたくなるのを押さえて、教科書を片付ける。




なんだこのデジャブ。
前にも聞いたぞその台詞。



にこにこと人の良さそうな笑みの臨也は息1つ乱れていない。お前肺活量凄いな。




「何、何の心境の変化なわけ?」



眉間にシワを寄せて一瞥すれば、臨也は私の顔を覗き込む。

反射で顔の距離を保つと、少し嬉しそうにするから恥ずかしくて仕方ない。



「だって俺のこと疑ってるんでしょ?」

「……はあ?」




疑って、って。

何が。



「俺、好きなものには素直だよ?」

「……“もの”?」

「もちろん、人もね」



――――ね、わかちゃん。



「!」



言葉が出なくなった。

いつもの私なら冗談だととらえていたはずなのに、今そうならないのは、



臨也に好きになってほしいと思っているからだ。













15.周りの騒音が耳に入らない。



好いている自覚はあった。
好かれている自覚もあった。

けど、受け止めるのがどうしても難しいのだ。








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