彼の視線は彼女にだけ注がれていた。
(髪、切っちゃおうかな)
甘栗色をした髪は腰まで伸びた。
ジャンは髪が長い人が好きだと思っていたから。
実際本人に確かめたことがないからわからないけど。なんとなく、伸ばしていたのだ。
「リズ、行かないの?」
「あ、行く行く」
ミカサに名前を呼ばれて我に返る。これから壁外に行くのに集中力がかけている。このままじゃダメだ。
「何考えてたの?」
「んー、髪を切ろうかなって」
「…勿体ない」
「ミカサだって短いじゃない」
「私はエレンが短い方が邪魔にならないって言ったから」
「ふーん。確かにそうよね」
私にはもうのばす理由がないのだ。
だって前にジャンはミカサの髪を褒めていた。顔を染めて。
(はじまる前に振られたってこと?)
ジャンとは昔からよく遊んだ。家が近いし、歳も近い。
いつからか好きになっていたし、彼を目で追っていた。
「ミカサ!リズ!」
声がした方を見れば今自分が思い描いていた人物が手を振っている。
「お前等どこ担当だ?」
「私は右翼。てかジャンが2人に見えるわ」
「俺は馬面じゃねぇ」
自分の愛馬の手綱を握りなおすジャン。
ぶるるっと馬が鳴いた。
お前も似てると思ってるのか?
「あれ?ミカサは?」
「あそこだ」
隣に居たはずのミカサはいつの間にかアルミンの側に居た
「仲いいなぁ」
「ほんとにな。」
「ジャン行かなくていいの?」
「は?なんでだよ」
「ミカサに会えるの最後になるかもよ?」
壁外は危険だ。毎回多くの犠牲者が出る。
「死んでたまるかよ」
「そうだね」
「リズも、気を付けろよ」
「ジャンもね」
貴方はミカサの心配でもしてれば?なんて可愛くない事を言いそうになってやめた。
私が言ったところで嫌味だし、あの首席卒業のミカサだ。心配は無用だろう。
「私、髪を切ろうかなって思ってるの」
「急だな?」
「邪魔になるし、返り血とかつくと絡まるし。」
「そうかよ。じゃぁ、この髪も見納めか」
一房の髪を持ちジャンはまじまじと見ている
「ねぇ、ジャンは、」
髪の短い人が好き?
そう言いそうになってやめた。
聞いたところで何になるんだ
「班長が呼んでる…じゃぁね、ジャン」
「……あぁ」
ゆっくりと離れる。
私も愛馬を迎えに行かねば。
「なぁ、リズ!」
「ん?」
「お前は邪魔だって言うけどよ」
へらって笑った顔
風が吹いて緑のマントが揺れる
「俺は、その髪いいと思ってたぜ」
「――‐っ」
じゃぁな、と手を挙げて彼は人の波に消えていった
(ずるい)
こんな事言われたら、意地でも死ねない
(切るの、やめようかな)
まだ私にもチャンスがあるでしょうか
髪、さらりさらりと
(風にゆれる長い髪を目が勝手に追ってるなんて言えねぇよ)

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