「私、恐いんです」
ぼたぼたと言葉通りの大粒の涙を流す女はそれだけを言った
「…」
「自分が恐いんです」
「…」
冷たい床にペタンと座って俺を見上げる
「私はエレンみたいに強くない、です」
「今日はもう遅い。休め」
「兵長、」
「実験が続いて疲れてるんだ」
「違うんです」
座っている彼女を抱き抱えてベットまで運ぶ
腕のなかの彼女は力なく涙を零し続けていておとなしく運ばれた。
「巨人になるたびに、自分が異様な存在だと感じて……」
辛い。
前々から彼女はそう言っていた。
エレンと同じ様に彼女もまた巨人になれる人間だ。
(つまり実験される、がわ)
「明日の実験は延期するよう言っておく」
瞬間彼女は目を見開いて眉間に皺を寄せた
「ち、違うんです!実験が嫌なわけでは…」
「何が違うんだ。巨人にならなきゃそんな想いしねぇだろ」
ベットに着きリズをゆっくりと降ろす
「みん、なの役に、たちたいとは思います」
瞬きをするたび落ちる涙はいつになったら止まるのだろうか。
隣に腰を掛ける。
「泣くなリズ」
「っ、ぇ」
ゆっくりと頭を撫でてやる
「“俺達”は人間だ」
「ん、くっ、ひっく」
「巨人がこんな泣くはずねぇしな」
親指で拭ってやればリズは困ったように笑う
「そう、ですね」
「わからないならわかればいい。この俺がついてるんだ」
「…はい。兵長は、私が怖くないんですか……?」
「こんな泣き虫、怖いわけあるか」
むにっと柔らかい頬をつねればうぅ、と声が出た
「ガキはもう寝る時間だ。早く寝ろ」
「兵長、こ、子どもなんで、我が儘いってもいいですか…」
「……なんだ」
「もう少しだけ、側に居てください…」
明日も、実験頑張りますからと付け加えたリズ。
「…ガキ」
優しく触ってくれた手はとても暖かくて、ゆっくりとリズは布団に沈んだ
人間
(大丈夫、兵長が言ってくれたから、大丈夫)

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