スピカの遺言

シリーズUのケン×チワの話。
※台詞にだけですが後追い的表現がありますので、不快感を持たれる方は閲覧をお控え下さい。
推奨も、命を軽んじている訳でも有りませんがこういった深層思考を持ったCPなので…
読まれた後で不快感を持たれましても責任は負えかねます。












くらくらする位の
意識の中で
ふと浮かんで来たのは俺からの今までで一番の我儘。


「まさか、インフルエンザ掛るなんてなぁ……」


ケンさんがベッドサイドに座って、僕の額に自分の額を押し付けて熱を図る。


「んん。
まぁ、ちょい熱い位かな?」

「移るよ……」


インフルエンザってたしか感染するんだよね
とかぐらつく思考の中で確認する。


「チワちゃんからの病気やったら大歓迎やわ」


にっこりと見惚れる様な笑顔に「ばか」何て言って、背中を向ける。

(頬が赤いのはきっと熱のせい)

何て益々上昇してきそうな熱を病気のせいにしたりして。


「でも、ホンマに俺に移ってチワちゃんがしんどなくなるんやったら
俺はいつでも引き受けたんで?」


そんな歯の浮く様な台詞でもケンさんが言うと何でこう格好良いかなぁ何て思ってしまう辺り
僕、こっちの方もかなり重症?


「はは。
ケンさんってば格好良いなぁ
でも、もしケンさんが僕の病気移って苦しくなるんだったら
……僕はこのままでいいかなぁ」

「チワちゃん」

「ねぇ。
ニュース見たんだけど
最近のインフルエンザって死亡率やたら高いのもあるらしいよ」

病院行ったら
それとは違う種類でかなり軽いやつだったけれど
ふと思ってしまった事……。


「ね。
ケンさんはもし、僕が死んじゃったら悲しんでくれる?」

「何言って……」


ケンさんの手が
ぎゅっと僕の手を掴んでくる。

その手の強さに少しの苦笑と喜び。


「もしもの話……
死ぬ訳ないじゃん。
こんな軽い熱位で」

「やけど……」


不安気な表情のケンさんなんて中々見れるもんじゃ無いよね……。
珍しい物見れたなとか思いながら

繋る手に僕からも力を込める。


「ねぇ……もしもこの先、僕がケンさんより先に死んじゃったらね……












まっ先に僕の存在を忘れてね」

「!?っ…何言っとんねん!」


ケンさんの言葉を無視して僕は僕の思いを
言葉を紡いでいく。


「僕の持ち物を全部燃やしてさ……
僕の存在を忘れて、ケンさんはケンさんで自分の幸せを探して?」


たかがインフルエンザで何言ってんだろうねとか思っていても、
病気の時は弱気にもなるし


きっと今言っておかなくちゃもう絶対に言えない気がしたから……。


「でもね、もう一つだけお願い。
燃えて灰になった僕のほんの一握り


ケンさんの側に置いてあげて」

「………」


言葉を伝える度にケンさんの手に力が込もる。

矛盾したお願いだと思う。
我儘だとも……。
でも、両方共俺の本当の気持ち。

ケンさんには幸せになって欲しい。

出来たら僕という存在を忘れて、しがらみ無く幸せになって貰いたい。

でも、ほんの一握り分だけ
僕が存在した証をケンさんの側に置いていて欲しい。
どこかの引き出しの奥に置きさられても良い。
そのまま忘れさられても良いから













僕が生きた証を貴方の側に置いていて。

そんな願いを込めての僕のお願い。


「チワちゃんには悪いケド
そのお願い聞かれへんわ……」

「えっ?んんっ………?」

ケンさんの返事と同時に深く口付けられる。


「んっ…ぁ…」


舌を絡められて、
言葉ごと思考も奪われて
抵抗何かする隙すら与えられないまま

気が遠くなるくらいの深くて永いキスをされた。



「はっ………はぁ…ふっ………」


さっきの余韻を残すかのように糸を引かせながら唇を離す。


「悪いケド











そのお願い叶える前に俺が死ぬから……
チワちゃんが死んでもうたら俺、生きる意味あれへんもん。
チワちゃんが死んだら、真っ先にチワちゃんの後追ったる
やから俺らはずーっと一緒や」


ケンさんの瞳が薄く狂気で色付いていて
一瞬背筋が氷りついた。


「じゃあ……もし僕がケンさんより長生きしそうだったら?」

「そんなん決まってるやん


チワちゃんは俺から離れられへん……
俺がそう躾たやろ?」


黒い空気を湛えた
でも魅られそうな程の綺麗な笑みのまま
低く、誘う様な声で囁いてくる。

ケンさんの言葉通り、僕はきっとケンさん無しじゃ生きられない。

心も躯もケンさんが隅々まで浸透しちゃってるから。


「そうだね……
じゃあ俺達ずっと一緒?」

「うん。『死が二人を別つまで』何て言葉は俺らにはいらんね」

「死んでからも一緒だもんね」


くすくすと、お互いに笑みを浮かべて狂気じみた言葉を交す。


「愛しとるよ。
智和」

「うん。
僕も愛してる」


まるで依存性の高い麻薬みたいな言葉は
甘く僕達を酔わせてくれた。


くらくらする位の
意識の中で

ふと浮かんで来たのは僕からの今までで一番の甘い誘惑を含んだ我儘。












「ねっ……ずっとずっと側にいて?」



END


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