風見鶏

ふわり

ふわり

彼から薫る
この蒸せ返るような暑い夏にとても好ましい柑橘の匂り。


ふわり

ふわり

其は決して強く自己主張するような物ではなく


ふわり

ふわり

風に乗って初めて細やかに
そっと、慎ましく存在を示す様はとても好ましく。

私は只々
その匂いをずっと感じていたいと思うのです。


ふわり

ふわり

そして、はたと気付けば甘酸の匂いに混じりほんのりと其とは違う甘い薫り。


ふわり

ふわり

嗚呼それは彼の大好きな大好きなチョコレヰトの匂いでした。

それでも、漂う薫りの芳しさが全く損なわれはしないと思うのです。

寧ろ
私は、其を愛しいと思うのです。
私は、彼の匂いに包まれて居たいと思うのです。


嗚呼、それでも
私がどれだけ彼を恋焦がれても其は叶わぬ願いなのです。

彼の瞳には私は写っていないのでしょうから。

私が恋焦がれる彼の瞳に写るのは
とても優しく彼に微笑みかけるあの人なのでしょうから。

拗ねた様に少し突き出た愛くるしい唇が紡ぐのはあの人なのでしょうから。

嗚呼

其でも私は彼を御慕いしているのです。


ふわり

ふわり

彼の薫りを乗せて舞う風を
締め付けられるような想いで追うことしか出来ぬ私は

嗚呼

嗚呼

まるで風見鶏のようだと思うのです。







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