4.







やっとこさ平静を取り戻した私は、
本題へと戻ろうとする。


まったく、忘れちゃいそうになったよ。

抱き締められたりとか抱き締められたりとか抱き締められたりとかして。



しつこい?
でもそれだけ私の心に衝撃が来たんだよっ


自分の好きだったキャラクターが目の前に実在してるってだけで
心臓破裂ものなのに、あんなコトされてみ?
色んな意味で生きてけないよ!!



私は誰に言ってるのか分からない言い訳を心の中でボヤき、いや、叫びながら、
また忘れてしまいそうだった本題を思い出す。




「あ、あのね、ナルト。」


「何だ…?」



え、ナルトってば何でそんな穏やかな顔で私の事見てるの?

ちょっと前までの恥ずかしがって顔が紅かったナルトはどこに?



落ち着き巻くったナルトに私は慌ててしまう。


落ち着け、落ち着け?
私のが年上だよ?

もうランドセル卒業した年だろ?
そうそう、私は年上。



呪文のようにそう自分に言い聞かせて、
私は言葉を続ける。




何か、この場の主導権を完全に持っていかれた気がする……。
これが主役張る人の凄さなんだろうか……。


「えっと、一気に話しちゃうから。
質問があったら後でまとめて聞くね。」


「……わかった。」



ナルトの了承を聞いて、
私はすうっと息を吸い込む。

ふっと満タンで出そうになってしまった息と同時に、
言葉を吐き出した。



「まず、私はこの世界の人間じゃないの。でね、何でここに居るかっていうと、私の世界での私が死んでしまったから。
で、それは運命が決めた死期じゃなかったらしくて、私は死んでから、奇抜な格好をしたお兄さんに出会った。で、そのお兄さんは私の世界の魂を調節する人らしくて、つまりは神様みたいなんだけど、その人が言うには、私はまだ死ぬ時じゃなくて、本当は私の親友が死ぬ予定だったって。
親友の代わりに死んだのは私的には別に良かったんだけど、
私に申し訳ないから、御詫びがしたいって言われて、で来たのがこの世界。
家もお金も身分証も用意してくれて、着いたのは実は一昨日なんだよね。
でも、この世界については、大体知ってるの。
何でかっていうと……、この世界は、私の世界では物語として、存在していたから。因みに主人公はナルト、君ね。
だから、物語は君が十二歳頃からスタートなんだけど、この世界の仕組みや生活については大体分かってるつもり。」


もう勢いに任せて一気に言ってしまって、
言い終わった時には酸欠でぜいぜい言ってしまっていた。



漫画だ、ってコトを言うかどうかは直前になっても戸惑ってしまったけど、
やっぱり言ってしまった。

ナルトに、隠し事をしちゃいけないって、何となく思っちゃったんだよね。



ずっと黙ったまま聞いてくれてたナルト。


言い終わって息苦しくしてる私も、ただじぃっと見てるだけだった。



「………質問は・・ある?」


何も言ってくれないナルトに私は不安になってしまう。

やっぱり、こんな話を信じろって、無理があるかな……?





「………麻夜はその物語を読んでいたのか?」


「え?うん、愛読書。
前世で一番好きな話だったよ。」



「・・・そうか。年齢は?」


「十二歳。もうすぐ十三歳になるけど。」



年齢を言うと、ナルトはちょっと驚いてた。
そして、その後に少し考え込んでしまった。

え、やっぱり十個も上ってだめなのかなっ
私がそう慌てて聞こうとすると、ナルトから次の質問が来た。



「…………死んで、後悔はなかったのか?この世界に来て・・・。」


――――後悔はなかったのか?



その言葉には、少し躊躇ってしまった。



「………。う〜ん…、ないって言ったら嘘になる。けど、戻りたいとまでは思わないかな?」

「・・・何故?」




この答えには、即答できる。


「だって、ナルトに会えたもの。
君に会えたから、それまでの不幸なんて帳消しどころかお釣りがくるよ!」



「っ、そうか。」



ならいい。って納得されてしまった。
あれ?もっと何でこの世界なんだーとか、
物語ではどうなってるんだーとか、
死神さんのこととか聞かないのかな?



「………ナルト、質問はそれだけ?」


「……ああ、十分だ。
有難う、話してくれて。」



「え、本当にそれだけっ?
疑わないの?自分でもあり得ない〜って思える話なんだけど!?」




問い詰めるように聞く私に、
ナルトはちょっと笑いながら答える。



「言ったろ?麻夜を信じる、と。
麻夜が話した事がどんなに理解し難くても、俺は信じるさ。
それが事実なんだと、受け止める。
それに、忍術でも、死神との魂の取引をする技だってある。
全く有り得ないという事ではないと思うしな。」



ナルトが微笑みながら言ってくれる。
死神との取引をする技って、四代目の技の事だよね?

私も詳しくは分からないけど、それとはまた違う感じの話なのに、
理解してくれるの?



「物分かりが良すぎだよ、そして私の事を信じ過ぎだよ………ナルトは。」



私の言葉に、ナルトはふっと笑った。
それに釣られて私も笑う。


私はナルトが私を信じてくれてる事にすごく感謝をして、
やっぱり隠さずに言って良かったなと思った。









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