ごめんね


 その後、政府からは数名の屈強な男が来ることとなり気持ちの悪い男を連れ去っていった。

「・・・・・・こんのすけ」
「はい?」

 ごめんね。
 何については言わずもがな。
 小さく呟けば、こんのすけは鼻をヒクヒクさせ、那智を見た。

「混乱していたのでしょう、無理もありません」

 寛容な狐に、もう一度小さく、ごめん、とだけ返す。

 さすがにここまで体験してしまえば、馬鹿でもわかる。

 これは紛れも無い現実だ。

「・・・さっきの人たちはどうするの?」
 きっと、心身ともに溜まっていたものがあったのだろう。先の部屋から追い出した時には質問を投げかけてきた眼帯男でさえも一言も発することがなかった。
一体どこまでのことをすれば、ああまでさせるのか。想像は容易い。

「取り敢えずは、手入れに集中していただきましょう」
「・・・手入れって・・・」
 まるで物のような言い方に引っ掛かりを覚える。
 ボキャブラリーが少ないのか、狐だし仕方がないのか、自分を納得させようと悶々としていると、こんのすけがその小さな体をこちらに向けた。

「さて、審神者様のお部屋までご案内しますね」
 その言葉に頷きそうになりながらも寸でのところで、あ、と声を漏らした。

「それなんだけど、私、審神者になんてなるつもりないからね?」
 今日はもう日も落ちてることだし素直に泊まらせてもらうけど、こんなワケのわからない場所からは早々に立ち去りたかった。切実に帰りたい。

 明日には帰るから、帰り方は?首を傾げて見やれば、頭が斜めっているこんのすけと目が合い驚いたが、よく見れば同じく首を傾げていた。

「はて?審神者様は既に審神者様ですが・・・」
「・・・いや、えっと、だからね?その審神者になったつもりもなければなる予定もないの」
「そう言われましても・・・こちらに足を踏み入れてしまった以上、貴方様は審神者様以外の何者でもない訳でして・・・・・・ええと・・・なんと説明をすれば良いのやら」
 口ごもり俯くこんのすけに嫌な予感がよぎった。
どうか、外れててほしい。と願いながら、もしかして、と切った。


「・・・帰ること、は・・・できない、の?」


 その言葉に、こんのすけは黙って俯くだけであったが、それは何よりの肯定だった。


  
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