三度目の正直


「こんのすけ」
「ッ、はい・・・!?」
「政府に連絡して。今すぐ」
「・・・え、今、と申されましても・・・」

 そう、今の時刻は夜の8時。
 本当に、その政府とやらが存在するのであれば公務員である彼らはとっくに帰路についている時間。
けれど、そんなものは関係ない。

「何度も同じことを言わせないで」
 この言葉も2回目、短くそう言えばこんのすけは・・・承知しました、とその場から消えた。正直、自分の目を疑う光景だったが、それよりも、と目の前で腰を抜かす男に向き直る。

「ッヒイ!?」
「・・・後ろ、向いて」
「・・・あ・・・、・・・」

 近くに転がっていた縄を手に取り、男の手首と足首を血が止まらない程度に力いっぱい締める。途中、傍でことの成り行きを見ていた褐色肌の青年に声をかけ手伝ってもらった。那智が縄を手に取った際に肩を大きく震わせたその青年の腕には縄の跡がくっきりと残っていた。

「・・・・・・あなた、名前は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大倶利伽羅」
「おーくりからくん」
「・・・・・・・・・・・・・・・親称はいらない」
「・・・くりから?」
 無言は肯定ととっていいのだろうか、やけに無口な青年を前に那智は話を進めた。
「・・・コレは私が見てるから、あなたたちは手当てをしてきて下さい」
 それと、他にも人がいるのなら事の次第を言伝願います。
 そう続けると、それまで黙っていた眼帯をつけた男が声をあげた。

「あのっ」
「・・・なんですか」
 自分よりも大分、高い男を見上げる。正直、こういった明らかに女性受けの良さそうな異性と話すことは気が乗らない。現状、そうも言っていられないが回避したいというのが正直なところだった。
 面倒なことに巻き込まれず、ややこしそうな場は回避。那智のなかの教訓のひとつであった。

「君は・・・僕たちの新しい主、なのかな・・・」
「・・・・・・はい?」

 何をどうしてそうなった。いや、そもそも主ってなに?
 考えがそのまま顔に出ていたのだろう、眼帯男は言った。

「あ、えっと・・・さっきの、こんのすけくんが審神者様、って・・・呼んでいたから・・・」
そこで、ああ、と思い返す。
 確かにあの流れであの呼び方は誤解を招くだろう。あの狐には戻り次第、もう一度いってやらねば。


「私は審神者なんてものじゃありません。勝手にそう呼ばれているだけです」
「審神者様ッ!ただいま戻りました!!」

「・・・・・・・・・・・・」
「・・・えっ、と・・・」


ーーー後ろで慌てる狐に言ってやりたい。
仏の顔も三度まで、だと。



  
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -