君にだけ、特別に。


戦勇。
ロス×アルバ
性描写注意!




















彼は俺のことを酷い奴だと言う。冷たい奴だと。何故か泣きそうにでかい瞳を潤ませて、ムッと唇を尖らすその人を一言で表現するならば《間抜け》という言葉がぴったりだろう。人が自身のことをどう思おうが勝手なのだから、俺がそうですかと素直に返せばまたジワリと涙をためて唇を噛む。いったい彼は俺にどう答えてほしいのだろう。しかし、答えが分からない俺がどうしてほしいのかと尋ねれば彼は言いたい放題ものを言うだろうから敢えてどうすべきかは聞かないでおいた。すると手元にあったクッションを投げつけられる。どうやら何も聞かなかったことが気にくわなかったらしい。避けた所為で少し後ろの方へと落ちたクッションを拾い上げ、俺に歯向かった罰にそれを顔面にググッと押し付けてやった。


「……ぶはあっ!ぐるじぃ!ごめんなさい!」

「負けるとわかっているのに挑むとは。本当に勇者さんは馬鹿ですね」


呆れながらそう言えば、彼はやっぱり恨めしげに俺のことを睨んでくる。あぁ、馬鹿だなぁ。そんな顔したって全然怖くもかわいくもないのに。ニヤリとわざとらしく意地の悪い笑みを浮かべて見せれば、彼はふぐ、と息を呑んで視線をはずす。ぷい、と頬を枕に押し付けて、やっぱり戦士は性格悪いと呟く勇者さんは不機嫌そうだった。勿論、俺がそんな彼にフォローを入れることはない。それはいつものことだ。しかし、こうも一方的に詰られるのはいい気分ではない。ムッとしながら勇者さんの腰辺りに肘をグリグリ押し付けながら何がそんなに気に食わないんですかと尋ねてみた。


「いつも言ってんだろ!後ろからは嫌だって!」

「そうでしたか?」

「そうだよ!」

「でも勇者さん、かなり快さそうに喘いでますよ」

「っ、だ、誰が!」


そんなわけないと意地を張る勇者さんだが、事実彼は後ろからの行為でよく乱れている。ついさっきだってルキが隣の部屋で寝ているというのに散々声をあらげていたではないか。まぁ、普段よりは抑えようと必死こいて漏れ出る声を堪えようとする姿はけっこう煽られたのだけれど。


「いったいなにがそんなに気に食わないんですか」

「なに、って」

「理由次第では今後の体位を考えますよ」


きっと大した理由はないのだろう。そう思いながら勇者さんから体を離せば、彼は俺の顔をチラリと窺った後、恥ずかしそうに顔を赤くして見せる。何ですかとあからさまに顔をしかめれば視線を外し、小さく戦士が、と小さく呟いた。


「は?俺?」

「せ、戦士が見えない、から」


不安になる。告げられた言葉に瞬きを繰り返す。不安になるとはどういうことなのだろう。ジッと彼の言葉を待っていると、勇者さんは耳まで真っ赤にして顔を枕に押し付けた。


「顔が見えないから、戦士もちゃんとき、気持ちよくなってるのか、とかわからない、から不安にな……っ、うあっあ!?なん、で!」

「すいません、つい」


興奮したので、と無表情に言い放ち、ひくつくそこに猛った己を押し込んだ。予期せぬいきなりの挿入だというのに、彼のそこは粘着質な音を立てながら俺自身を呑み込んでゆく。何で急に突っ込んでんだと声を上げながらビクビクと震える肩に優越感に似た感情が顔を出し、無意識に口角が上がってしまった。さっき散々中に出したおかげか、滑ったそこは思いの外あっさりと俺を受け入れ、その浅ましさにククッと笑い、ヒクリと戦慄く部位を指でなぞりながら、貴方が煽るようなことを言うからと笑ってやった。本当、勇者さんは馬鹿で間抜けで困る。いったいいつになったら俺のスイッチに気づいてくれるのだろう。


「アンタ、本当に馬鹿ですね」

「っ、なに、んっ、ぅあぁっ」


ゆったりとした律動でも、ついさっきまで行為に及んでいた体には確かな刺激となる。ヌチヌチ、と腰を動かす度に結合部から溢れるのは先程散々中に出した俺の精液だ。自身でも盛ってるという自覚はあるがきっとそれは仕方がないことだろう。次第に激しくなる動きと大きくなる卑猥な粘着音、嬌声は俺の理性を崩し、興奮材料へと姿を変える。


「あああっ、ふ、ロ、ロスッ」

「っ、」


行為の最中にだけ呼ばれる名前にゾクリと背中が戦慄いた。本当に、無自覚に人を煽るのが巧い人だ。ガブリ、と白い肩口に歯形が残る程強く噛み付けば中がキュッと締まって抽挿を繰り返す俺を強く締め付ける。勇者さんは認めたがらないが、彼はM気質だとセックスの最中に度々思い知らされることが多い。


「あぁん!ロス、やだっロスっ!」

「っ、俺が、どうでもいい人を抱くとでも、思ってるんですか?」


だとしたらアンタは相当な大馬鹿者だと笑いながら、今度は柔い首に噛み付いた。ジワリと微かに滲む血を舐めとり、痛いと嬌声の合間に告げられた抗議など聞こえぬふりをして白く、細い腰を掴む。ギシギシと軋む安っぽいベッドのスプリングに合わせて彼の榛色をした柔かな髪がパサパサと白いシーツの上で踊っている。普段間抜けなこの男をこうまで乱しているのは俺なのだと思うと酷く興奮した。


「んぁ、あう、も、イくっ!」

「っ、ん…………アルバさんっ」

「ひっ!あぁ!」


耳元で名前を呼んだ瞬間、一際強く中が締まる。へぇ、名前呼ばれるの好きなんだ。シーツの上に迸った勇者さんの精液を指で掬い取り、ニッと笑いながら名前でイくなんて変態臭いですねと笑ってやった。


「っ、いい加減抜けよ!」

「俺はまだ終わってませんよ」

「ひぁ!動かすなぁ!」


嫌だと言いながらも快楽に流される。嫌いだと言いながらも体、表情、仕草全部で俺が好きだと言う。天の邪鬼で馬鹿で天然で面倒臭い。


「でもそういうところ、嫌いじゃないです」


クス、と笑いながら、出来る限りの優しさを含んだ所作で唇を項に押し付けた。











君にだけ、特別に。
(たまには優しくしてあげますよ)











2013.01.20

戦勇。だだはまりしました。
アルバさんクソきゃわわ!
ロスのドS加減ヤバイ惚れるわ!!ロスアル好き様と校友を深めたい今日この頃。

2013.01.21 加筆

( 45/51 )