すきすきすき!


エイプリルフールネタ



ジッと鋭い目を見つめながら、俺は少しだけドキリとした。くそ、やっぱ勝呂ってかっけぇ!

どないした?と不思議そうに俺を見つめる勝呂を見上げながら、意を決したように一度だけ喉を鳴らす。グッと掴んだ胸ぐらを引き寄せて、ちゅっ、と右頬にキスをひとつだけ。うわ、なんか想像以上に恥ずかしい、かも?


「な!?なんや!?」

「俺、勝呂がすき!」


がうっ、と吠えるようにそう言えば、勝呂の顔は一気に真っ赤になる。はくはく、と口を動かす姿になんだかこっちまで気恥ずかしくなって、無意識に小さく「うわぁ、」と呟いてしまった。ドキドキと指先まで痺れるみたいな感覚を感じながらジッと勝呂を見上げていると、急に勝呂はハッとしたように目を見開いて、すぐさまムッと顔をしかめた。それは酷く不機嫌そう、というよりかなり苛ついているように見える。


「阿呆!」

「うぎっ!」


ガツッ、と頭を殴られて呻き声を上げる。痛い!なにすんだよこのバカ!


「エイプリルフールやからってほない胸糞悪い嘘吐くな!」

「……はぁ?」


エイプリルフール?きょとりとしながら今日の日付を思い出し、俺は小さく吹き出すように笑ってしまった。


「ふはっ、勝呂ってバカだ」

「はぁ!?」

「知らねぇの?エイプリルフールって嘘吐いていいのは午前中だけなんだぜ?」


つい、と指を立てながら、幼い頃にジジィに教わった豆知識を披露する。そうだ、あの時はジジィに盛大な嘘な吐きたくて1日中悩んだあげく、その考えに考えた嘘を吐いた瞬間に「エイプリルフールは午前中だけだ」とニヤニヤしたジジィにバカにされたのだ。あの悔しさは何年たっても忘れられない。


「…………は?」

「だぁかぁら!今のは嘘じゃねぇってこと!おわかり?」


俺はトスッ、と勝呂の胸を拳で軽く殴り、ニッと歯を見せるように笑ってみせた。











すきすきすき!
(こんなにスキなのに嘘なわけないない!)











信じねぇならいいけど、と唇を尖らせて背を向けると、すぐさまギュッと後ろから抱き締められる。驚いて瞬きを繰り返していると「ほんなん知らんわ、阿呆……」とどこか弱々しい声が降ってきた。


「すぐろ?」

「奥村て案外いけずなんやな」

「んー?」

「……なんもない、許したる」


俺も奥村が好きやからな。そう言った勝呂は疲れたように、しかしどこか幸せそうに溜め息を吐いた。











2012.04.01

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