理由は簡単。


「何でだよ!」


昼休みの教室で、俺の机にダンッと両手をついたルフィに「なんでかな」ととぼけた返事をした。するとルフィはグッと歯を食い縛り、「ひでぇよ」と呟いて泣き出してしまった。ポタポタ落ちる涙を拭おうともせず、椅子に座る俺を見下ろすルフィは、顔を真っ赤にして小さな嗚咽を漏らす。あぁ、泣かせてしまった。軽く自己嫌悪に浸りながらも、その泣き顔の綺麗さに息を呑む。ジッとその顔を眺めていると、ルフィは机を挟んで向かい合わせにするようにして置いた椅子にストンと座り、ゴチリと額を机にくっ付けた。


「う、う、またゾロに女の子とられた……」

「とったんじゃねぇ、あっちが寄って来たんだ」


まぁ確かに、色々あからさまなアピールはしたがな。


「それにしたってなんで俺がいいと思った子はみんなゾロを好きになるんだよ!」


ワンワン泣くルフィの髪を撫でてやりながら、「運が悪ぃんだ」と軽く慰める。もちろん運なんて関係ないのは承知の上、というか全て俺の策略なんだけどな。


「まぁそう腐んなよ、次見つけろ」

「うー、くっそぉ……だいたい何でゾロは俺の気に入る子ばっか狙うんだよぉ」

「……さぁな?」











理由は簡単。
(キミはボクのモノだから)











他の奴のモノになるだなんて許せない。綺麗な涙で濡れた頬を指先で拭ってやると、ルフィはきゅうっとでかい目を細めて。そんな仕草に笑みを浮かべ、好みが似てんじゃねぇの?と言いながら広いおでこを小突いてやれば、ルフィは赤い顔をチロリと上げて「そっかぁ、」と呟いた。


(……ルフィってバカだよな、まぁそこがカワイイけど)


なでなでと頭を撫でながら、バレないように小さくククッと喉を鳴らした。











2012.03.15

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