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すっかり日も落ち窓の外は暗闇だけが広がっている。そんななか煌々と自身の手に持つ携帯電話の灯りに照らされている柴崎麻子の表情は、厳しいものだった。
ついに尻尾を掴んだ。掴んだのだが、……出遅れた。自分の予想よりも事が少し大きくなりすぎていたのだ。
内部の人間の可能性もある為、七恵のことを思って慎重に動いたことが仇となった。
しかし今はグタグタ言っている暇などない。少しでも早く皆を集めなくては。
携帯電話の履歴を呼び起こし、すぐさま耳に押し当てた。今の自分にはその一連の動作すらも煩わしく思えた。
「もしもし、笠原?今すぐ堂上班を呼んでちょうだい。大至急!」
それから数分後。突然の呼び出しにも関わらず、堂上班の集まりは想像以上に早かった。
恐らくこの場に集まった誰もが、何故集められたのかを理解している。
その表情は皆硬く、特に堂上はいつもの五割増しで眉間に深く皺を刻んでいた。
呼び出した本人の柴崎はチラリと時計に目をやり、その視線をそのまま廊下へ繋がるドアへと向ける。すると、同じタイミングで廊下の奥の扉が開閉する音が聞こえた。続けて、バタバタと豪快な足音とその後ろを静かに歩く足音。
その二つの足音が部屋の前についた瞬間、大きな音を立て扉が開け放たれた。
予想通りの人物の到着に、周りの空気が一段と引き締まった。
「待たせたな!始めてくれ!」
「いえ、こんな時間にお呼びたてしてしまい申し訳ありません。玄田三監、緒方一正。」
「詫びはいらん!話を始めろ!」
「何か事態が動いたんだな。」
豪快な玄田に続けて、緒方が静かに言葉を続けた。柴崎がゆっくりと頷いたのを見て、全員が表情を固くする。集まる視線を一身に受けながら、柴崎は重い口を開いた。
「もう、これは七恵だけの問題ではなくなってしまいました…。」
この事件には、良化隊が絡んでいます。
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