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「犯人を呼び出すぅー!?」

そう叫んだのは驚きに体を仰け反らせた郁だった。他の面々も誰もかれもが渋い顔をしていて、特に堂上は厳しい顔つきでこちらを見据えていた。

けして良いとは言えないその場の雰囲気にも引くことなく、七恵は口を開いた。

「この手紙の送り先に返信してみようと思うんです。」

そう言う七恵の手には例の手紙。送り先の名前はファンクラブ会長となっていて、住所は調べてみると私書箱のものが書かれていた。

身元がわれないように、でも七恵との接点が欲しいという犯人の考えなのだろうか。

私書箱の契約者を郵便局に問い詰めるも個人情報だということで教えてはもらえず、調査をしていた玄田三監らも手詰まり状態だった。


「お前、何言ってるのかわかってんのかよ…。」

「さすがに賛成しかねるね。」

あまり表情を変えない手塚や普段温厚な小牧ですらも顔をしかめていた。


「私の思いを伝えたいんです!」

それでも七恵はまっすぐ前を見据え、一歩も引かない姿勢だった。







突然何を言い出すのかと思えば…。

眉間に刻まれる深い皺を隠すこともなく、堂上は腕を組んだ。

これまでも突拍子もないことを言うことはあったが、まさかこんな時にまで言い出すとは思わなかった。

一緒に過ごすうちに気づいたことだが、彼女は割と頑固なのだ。

こうなってしまった以上、きっともう勝ち目はないのだろう。

これが惚れた弱味というやつか…。


甘くなった自分に少し自嘲気味に笑って、組んだ腕を解く。

まっすぐ見つめてくる七恵の目を強く見つめ返して口を開くと、反対されることを予想したのか七恵はシャキッと背中を伸ばした。





「わかった。」


「ほら!堂上教官もこう言って……って、ええええ!?」


ちょ、冗談ですよね堂上教官!


郁が声を張り上げるのも無理はない。
周りの玄田三監や言い出した本人の七恵でさえも堂上のその言葉に目を丸くして、口をあんぐりと開けていた。


「俺がこんな時に冗談を言うと思うか?」

「い、いいえ…。」

手塚が引きつった顔でそう答える。

堂上はそんな周りの反応を気にも留めず、七恵を真っ直ぐと見つめた。

「ただし今まで以上に警護を厳しくする。何かあったらすぐに報告するんだ。いいな?」


七恵はその視線をしっかりと受け止め、両手を強く握りしめた。







堂上さんの眼差しは強くて、それでいて暖かかった。

必ず守ってやるから。



そう言われているようで、すごく安心した…。






「堂上さん…。ありがとうございます。大好きです。」


なんだか自分でもよく分からない気持ちがせり上がってきて、泣きそうになった。

この場に似つかわしくない言葉だとは分かっていても、どうしても伝えたくなってそう口にすれば、堂上さんはいつものように「知ってるさ。」と笑った。








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