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「あ、あの…えっと…。」


堂上は背中に冷たいものが流れていくのを感じた。
いくら不可抗力とはいえ、これは誤解を招いてもしょうがないのではないか。

暗い倉庫に差し込む光の先には小さな肩を更に縮こませてか細い声を出す、七恵の姿があった。



「聞いてましたか…?」


なにを、とは言わなかったけれど、その果歩の問いがなにを指しているのか嫌でもわかった。


七恵は俯いたまま、何も返事をしない。






「…はい。」

質問からしばらく間があいた後、七恵は顔を俯かせてはいるが先ほどの声よりもいくらか力の入った声でそう答えた。











心臓がバクバクと五月蝿い。
まさかこんなことが起こるなんて。
備品の補充に倉庫にたまたま寄っただけだったのに。

はっきりと聞こえてしまった果歩ちゃんの告白。そして、この状況。

あまりの衝撃に体が震えてしまう。

できることならばここから今すぐにでも逃げ出したかった。


でも、それをしてしまえばきっとこの先取り返しのつかないことに、大切なものを失ってしまうことになるのではないかと思った。



震える足を叱咤して必死にその場に踏みとどまると、そんな私を見た果歩ちゃんが静寂を破った。


聞いていたのか、と。



少し棘のあるように感じる果歩ちゃんの視線に顔がだんだんと俯く。


いつ間にか両手はスカートの裾をギユッと握りしめていた。

それを見た時、ふとこの間の麻子とのやり取りを思い出した。



“「いつでもあんたの味方だから。」”

“「うん、頑張る。」”





…そうだ。
私は、堂上さんを信じてる。

頑張る、って。麻子と約束もした。


しっかり、向き合うんだ。
向き合わなきゃいけないんだ。





「…はい。」

足の震えは消えてはくれなかったけれど、私の口からは存外力強い声が出ていた。


真っ直ぐ見つめ返すと、果歩ちゃんの目が微かに揺らいだ。


言わなきゃ。…言わなきゃ!


「か、果歩ちゃん!あの、私も、堂上さんのことが好きです。この気持ちは、きっと、だ、誰にも負けません!もちろん…果歩ちゃんにも!」







顔を真っ赤にしてギュッと目を瞑って。
握りしめたスカートの裾がシワになるくらい、必死に。


声は上擦ってしまい、目頭は熱を持ってきて、迫力のかけらもない。

それでも、七恵は必死に想いをぶつけた。





この想いだけは、誰にも譲れないから。






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