生きててよかったぁぁぁ! / 花村 陽介
俺は花村陽介。
最近、俺には悩みがある。
顔はまあまあイケてると思う。
これでも都会から来たし。
この町に来た時はそりゃあチヤホヤされたさ。
でも今じゃ、お節介野郎だのガッカリ王子だの散々な言われようだ。
挙げ句の果てに同じ様に都会から引っ越してきた鳴上がパーフェクトボーイなもんだから、完全に俺の立場はなくなっていった。
いや、けして鳴上のことが嫌いなわけじゃねーんだ!むしろ、尊敬しているし信頼してるし、つまり相棒なわけで。
あれ、俺今なに言ってんだろ。
よくわかんなくなってきた。
まあ、とりあえず周りに恵まれすぎて俺の存在感、最近薄くね?ってこと。
「あ、鳴上くーん!」
「鳴上くん!」
ほら、女子に呼ばれるのは相棒の方。
俺なんか眼中に無い連中がほとんどだ。
トホホ、と笑えば涙が光る。
今ならヒロイン座りできる気がする!
トントン。
そんなことを思っているとふと肩を叩かれた。
え?俺?
振り向いた先には天城に続く学校のマドンナと名高い名字名前さんがそこにいた。なんだか少しモジモジしている気がする。
え、なんだ?なんだ!?
隣のクラスだから接点はあまりない。たかだか委員会が同じくらい。
そんな彼女が一体何の様だ?
チラリと先ほどまで横にいた人物を見やる。相棒は尚も数人の女子に囲まれて少し遠い世界にいた。
あれ…?
今、相棒を囲っている女子の一人がこちらに向かってガッツポーズをした様な…。
それに向かって名字さんも潤んだ瞳で大きく頷き返している。
そして、何かを決意した様な強い瞳でこちらを見上げた。
あれ…?
なんだ、この空気。
これは…まさか…いやいや、待てよ。
いやでも、もしかしたら。
もしかしたら、もしかするかもしれないだろ!?
あれ?俺今、日本語喋れてる!?
「私、花村くんのことが好きです!」
マジかぁぁぁ!!!!
生きててよかったぁぁぁ!(え、ちょ、俺夢でも見てんの?)
(ち、違うよ!現実だよ!)
(マジか…。)
♭お題:)
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