春眠 | ナノ
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13

「よう、お二人さん。相も変わらず、使い走りご苦労さん」

特徴のある緑衣。明るい色をした髪を流した、端正な顔立ちの男。軽薄そうな雰囲気を持ち、それでいながら、決して侮れない実力を有した英霊。

あれは―――上の階層でも会った、ダン・ブラックモアのサーヴァント、アーチャー!
どうしてここに?

「何故も何も、見たらわかるだろ?今回はこの女のサーヴァントってこった」
「ほう、貴様も次から次へと大変なことだな」
「言うなって。だがまあ、報酬分は働くぜ。特にあんたを叩き潰すなら心も踊るってもんだ、なあ優男」

軽口をたたきながらも、こちらを挑発するように片眉を軽く上げて、視線を投げかけてくる緑衣のアーチャー。
しかし……その割に、敵意はないようだ。
何をしに来たのだろうか。

「って、残念だが、今回はあんたらに用はねーよ。用があるのはこっちの今の俺の上司。そんなに身構えるなって、俺はわざわざ仕掛けた罠を解除してやったんだぜ。礼の一つでも言ってほしいもんだね、なあ、シャノン」

な、あれで手加減した罠だったのか!?
なら、本来備え付けられていた罠とは、一体どれほど悪辣なものだったのだろうか。
想像しただけで、ぞっとする。
というか、解除?なんで?どういうこと?


「ええ、御苦労さま、アーチャー。命じたことだけはきちんとこなす。そこだけは褒めてもいいわ。それ以上の仕事はやらない気の利かなさが難点ですけれど」
「あたりまえだろ、余計なことをして新しい上司に叱られたくないもんでね。ってか、なに?上の階層には足を踏み入れるなって言ったり、折角仕掛けた罠を外せと言ったり、なんなんだよお前は。女王様ですか?」
「あら、いい響きね。拙い世辞だけれど、受け取るわ。
簡単な話よ。今回の客人は白野くんじゃないでしょう?彼女に否はないもの。私が今、心から持て成してあげたいのは彼だけ。目移りはしないわ。私、こう見えて一途な女なんですから」

緑衣のアーチャーからの報告を受けて、鷹揚に頷くシャノン。
その様は堂に入っていて、彼女が傅かれる立場の人間であることが見て取れる。
だが、その態度は時の為政者に反抗し続けた、緑衣のアーチャーの信条とは相いれ難いもの。

「へいへい、狙った獲物は逃さないってか、恐ろしいこって。つーわけだ。出直してきな」

案の定、そんな態度を見て疲れたようにため息をついた緑衣のアーチャーは、頭をかいてため息をつきながら、左手を振ってさっさと帰れと言わんばかりに私たちを追いやる手振りをする。

だが、そんな態度を無視してアーチャーは私をかばう様に一歩踏み出して言いつのった。
彼女の言動から隙を見つけようと言うのだろう。


「あんなSGを隠し持っている癖、そのような男を部下にするとはな。君の心の深遠さには眩暈がするな」
「あら、女の心を貴方なんかが計ろうだなんて不可能よ、朴念仁。それに、彼も華のないネズミですけれど、まあなかなかに器用ですし、十分我慢できるレベルだわ」
「はあ?ふわふわ、ふわふわと、なにからなにまで軽そうな鳥女がよく言う。3歩歩いて忘れる前に、もうちっと真実み、っつーか、重みのある言葉を語ってほしいもんだね」


途端、緑衣のアーチャーを見るシャノンの瞳に身震いした。
先ほど私に向けていた、どこか親しみの滲む色ではない。
白野を語った時に向けていた、凝ったような憎しみの色でもない。
ただ、感情をこそぎ落としたような色のない無機質な瞳。
それが、緑衣のアーチャーを、まるで余計なことを言ったモノを諌めるように、煩わしげに睥睨する。

「そう――――、ならその気になるように貴方を追い立てて見せましょうか。ええ、森の狩人をサーヴァントとするのですものね。私も仮とは言えマスターとして、闇を泳ぐようにネズミを駆り立てるのも吝かではないわ」
「げ、フクロウとネズミとか相性最悪じゃねーか。つか、わかってる?敵はあちらさん、俺じゃねえっての」
「ならせめてもう少し従順に、そして華やかに踊りなさいな。ただでさえ地味なんですもの。あまりにも聞き分けが悪かったら、雑魚エネミーと間違えて思わず潰してしまいそうよ」


……はて、思いのほか仲が悪いのだろうか。
運が良ければ、仲たがいを誘えなりしないものだろうか。
極力、戦闘を避けたいのだが。

「いや、それは期待しない方がいいだろうマスター。彼女はどうか分からないが、あのアーチャーは与えられた仕事は最低限やってのける男だ。この階層を守れと命じられていたのなら、決して職務は放棄すまいよ」

そうか、こっちアーチャーはあっちのアーチャーのことをよく理解しているんだね。
私も、アーチャーのことをそのくらい理解したい――――――
というか、アーチャーが二人いると、正直混乱する。
あっちとかこっちとか、緑衣とか、赤衣とかもう、頭がこんがらがりそうになる。
いっそ、ここは綽名をつけるべきだろうか。

「な、何を言っているマスター!まさか、ついに頭がやられたか!」

よし、今から失礼千万なことをぬかすこっちのアーチャーの名称を、フラグ製造機:赤男弐号機としよう。赤いし。

「却下だ、断固として抗議せざるを得ない!」
「良い発想ね、素敵よ白乃さん。昨今、赤とか青とか白とか紫とか、クラス名の前につける例が多くて嫌になるっていたところなの。そこまでして、クラス名に固執するくらいならいっそ適当な偽名でも名乗ればいいと思わない?ねえ、みどりん?」

ありがとう、賛同してくれてうれしいよ。
シャノンと視線を合わせて頷く。
なんだろう……今、凄く心と心が通じ合った気がする。

「あほか!!却下だ、却下!てめえも何言ってやがる」
「あら、まさか―――BBのみどちゃ、の方がよかったの?……服と同じく変な趣味しているのね、あなた」
「どっちも御免こうむる!ああ、何でおれはこんな立場なんだよ」

*****

ついにtypemoonが誇る絵師、武内が桜セイバーなるものを、作り出したとか………可愛い。本当にかわいかったです。やっぱりセイバーは可愛いですね。

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