運命の輪 | ナノ

  華の女子会


「わーっ、お店を再開する日が決まったんですね!おめでとうございます、結ちゃんっ」

『ありがとう姫ちゃん、新装開店パーティーには姫ちゃんも来てねっ』

「もちろんです!姉様も来ますよね?」

「当然だな。元親や毛利も予定は空けておくそうだ…ふふっ、期待しておくぞ、結」

『は、はい!』

「あら、ダメじゃない緊張させちゃ。結が期待に応えられず潰れてしまいそう」

『ひぃっ!!?』

「…お前が一番そうさせているだろう」

「ふふっ」




ごめんなさいね、と悪びれず笑う京極さんと隣でやれやれとため息をついた雑賀さん

そのまた隣の姫ちゃんは、楽しみですっと両手で持ち上げたカップの中のココアを飲み干した



休日の昼間。今日、豊臣軍の皆さんは勝家くんちの銭湯を貸し切りのんびり中だ

対する私は店に残り、常連客の女性陣との談笑を楽しんでいた。小さな女子会、だろうか





「それにしても…あの結が店のマスターを引き受けるなんて、正直、驚いたわ」

『は、はい!マスター不在の間…私が、お店を守らなきゃって』

「例の男が、そう思わせてくれたのかしら?ふふふっ」

『な…!きょ、京極さん!違います、あの人はっ…!』

「お、男って誰のことですかっ!?まさか私の知らない間に結ちゃんに素敵な人が!」

「ほう…詳しく聞かせてもらおうか」

『く、食いつかないでください!』




えーっと驚く姫ちゃんと、興味津々に身を乗り出す雑賀さん

違います!彼氏だとかそんな期待される話はありません!




「義輝がいなくなり意気消沈の結…それを救った神社の君…ふふっ、結が女の顔をするようになったのよ」

「まぁ!ピンチを救った白馬の王子様ですね!そこを詳しく!」

「私は、女の顔というところを詳しく聞こう」

「なんでも、二人は町外れの神社でひっそりと逢瀬を繰り返していて…」

『京極さんっ!!』

「あらあら、これ以上は結を怒らせてしまいそうね」




わざとらしく笑う京極さんに対し、私は耳まで真っ赤だろう

それを間違って捉えたのか、姫ちゃんも雑賀さんもニコニコと楽しげ…違います!違いますっ!!




「これは…店の再開よりも先に祝うべきか?」

「羨ましいです結ちゃん!あぁ、いつか私もあのお方と…!」

「あら貴女には、結とイエヤスくんのような関係はまだ早いんじゃなくって?」

『だ、だから、誤解を招くような―…って、あれ?』

「どうかした?」

『私、京極さんに…家康くんの名前教えてましたっけ?』

「あ…」




何故、彼女が家康くんのことを?

首を傾げる私を見つめながら、京極さんはいつもと変わらずふふっと妖艶に笑う


そして―…





ガランガランッ!!!!




「結っ!!!」

『ぎゃあっ!!?』

「聞いてくれ結!またアイツが…て、ん?なんだ、お前たちもいたのかっ」

「あらあら…品のない登場ねぇ」




壊れるんじゃないかと思うくらい鐘を鳴らしながら、扉を開いて現れた綺麗で勇ましい女の人

ドンドンと足音を鳴らし此方へやって来て…バキッと、カウンターを殴った





『ど、どうかしましたか、直虎さん…!』

「どうかしたかじゃないっ!!またアイツが私の誘いをすっぽかした!今度という今度は許さん…!」

「うーん、それはすっぽかしたんでしょうか?それとも単に逃げたんでしょうか?」

「姫、核心をついてやるな」

「どちらでもいいっ!!男の我儘に振り回されるのはいつも女だからな!」

「んー…そうかしら?」

『た、たぶん京極さんには当てはまらないので大丈夫ですよ…』




乱暴に椅子に座った彼女は長いポニーテールを震わせながら、これだから、これだから男はといつもの台詞を口にしている

井伊直虎さん。彼女もうちの常連さんの一人で頼れるお姉さんだ…頼れ過ぎてそこを男性が怖がるんだけど




「男の勝手に泣くのはいつも、いつも女…!そうだろう結っ!?」

『ひぃっ!!?』

「直虎、貴女が結を泣かせてどうするの?まぁ確かに置いてけぼりにされたけど…ね?」

『い、いえ、マスターは…そのっ…』

「男なんてそんなものだ!安心しろ結、どんな酷い男がお前を取り囲もうと私がお前を守ってやる」

「えー、野暮ですよ!結ちゃんにはイエヤスくんってボーイフレンドがいますもん、ねーっ?」

「なんだとっ!!!?」

『ひ、姫ちゃん!』



今、直虎さんにそれを言っちゃうのはまずい上に、ボーイフレンドじゃないし…!

ほら、握り締めた拳がプルプル震えてる!




「あの、結に、恋人が…!何故、相談しなかったっ!?」

『ち、違います直虎さん!勘違いなんです、恋人とかじゃ…!』

「貴女に相談するのは逆効果だと思うのだけど…」

「くっ…!結が泣くのを黙って見過ごせるわけがないっ!!相手はどんな男だっ!?何をされたっ!?どこまでいったっ!?」

『ち、ちち違いますお友達です!しかもそれ単なる馴れ初めじゃないですかっ!!?』




い、言えない…その正体が徳川家康で、石田三成や島左近と同棲してるだなんて…!

それを聞けばお得意の剣を振るいにやって来るに違いない。彼女の男嫌いはこの町でも有名だから




『本当にお友達なんです…でも確かに、私が店を頑張ろうって思えたのは彼のお陰です。とても優しい、太陽みたいな人ですよっ』

「きゃーっ!!言いましたね結ちゃん!そこから恋に発展です!素敵な方じゃないですかっ」

「結がそこまで言う男なら、私も認めるが…!女の幸せは男の有無で決まるものじゃないぞ!なぁ孫市っ!!」

「…何故、私に同意を求める」

『っ……ふ、ふふっ』

「でも、そこまでしてくれる男と友達止まりだなんて…案外、結も難攻不落なのかしら?」

『え?』

「興味があるの、ねぇ、結の好みのタイプってどんな男?」




京極さんからの質問に、みんなの視線が私へ集まった。思わず一歩後ろへ退く

好みの、タイプ…私だって女だし、もちろんどんな男性がいいかだとか、理想はあるよ


私、は……








『っ……秘密です!』

「えぇーっ!!?」

「なんだそれは!白状しろ結!お前はどんな男が好みなんだっ!?」

『ひ、秘密ですってば!あ、直虎さん、紅茶でいいですか?』

「ああ……って、誤魔化すなぁあっ!!!」

『ひぃっ!!?』

「ねぇ結?焦らされると気になるの、教えて?結と妾の仲じゃない」

『そ、そういう京極さんはどんな方が好みなんですか?』

「妾を奪うに相応しい完璧な男」

『ですよね!』






20140516.
女子会。直虎さん参戦

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