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『あ、元就さん。珍しいですね、こんな時間まで起きてるなんて』

「……ふん、月を見ておっただけよ」

『月ですか?』



いつも誰よりも先に起きる元就さん。だから寝るのも一番早くて、規則正しい生活を繰り返している

けど今晩は違っていた。庭で空を見上げる彼は月を眺めていると言うんだ



『満月ですか…月見にいい夜ですね』

「……そうか」



私も庭に降りてみれば、涼しい風が吹いていて気持ちいい

そして隣の元就さん。ほんと美人だなぁ…太陽信仰な彼だけどその肌は白くて綺麗、羨ましい限りです



「……なんぞ」

『あ、いえ。綺麗だな〜っと』

「ふん、日輪には劣るが悪くはない」

『ん−…私が言いたいのは元就さんの方ですよ』

「っ…貴様、何を言うかと思……」

「雪子〜!」

『元親っ!』

「チッ……」



家の中からフラフラと現れた元親。私に呼び掛けた後、元就さんが居ることに気付いたみたいで

互いが互いを睨んでいる…この二人は本当に仲が悪い



「なんだ毛利…寝たんじゃねぇのかよ」

「貴様には関係のない話。去れ、せっかくの月が台無しではないか」

「月?おー、今日は満月じゃねぇか」



元親も庭に降りてきて私の隣に並ぶ。空を見上げて月を確認したら、くっと小さく笑った



「こんな夜には月見酒といきたいが…他の野郎共も一緒となっちゃなぁ」

『宴会?うーん、そんなにお酒は用意できないね』

「ははっ、そんな贅沢言わねぇよ。雪子と一緒ってなら静かに月を見たいしな」

『なんで?』

「は?いや、なんでって…そりゃ、まぁ…」

『?』

「・・・・・」

『いたっ!?ちょ、なんで私は殴られたんですか!』

「……ふんっ」



元就さんチョップをもらった私と、何故か助かったような顔をする元親

悩んでもきっと答えは出ないから、私は再び月に視線を戻した。そして思い出す



『あ、ビールならあるかも』

「びぃる?」

『お酒よ。口に合うかは解らないけど、持ってくるね』

「…貴様は飲むでないぞ」
※本編36話参照

『?まぁ、明日も早いですから二人分持ってきます』








『はい、これがビール』

「うぉっ!!?泡だらけじゃねぇか」

『あははー、ちょっと苦いけどね。元就さんもどうぞ』

「…………」



三人で並んで腰掛け満月の下で小さな宴会となった

グラスに注いで二人に渡せば、はじめは泡に驚いていたけれど。真っ先に口にしたのはやはり元親だった



「お、旨いじゃねぇかっ」

『元親なら口に合うと思った。元就さんはどうです?』

「……苦い」

『ですよね…』



元就さんにはあまり合わなかったようだ。顔をしかめる彼を見ていたら、いつの間にか元親はグラスの中を飲み干していた

ハイペースだな



『あ、おかわりいる?』

「おう、まけまけいっぱい頼むぜ!」

『まけまけ…?』

「あ?あ−…分かんねぇか。まける…溢れるか溢れないかぐらい入れてくれってことだ」

『そうなの?じゃあ、まけまけいっぱい入りまーす』

「おう!」



調子よく飲み進める元親と、ちびちび舐める程度な元就さん。やっぱり彼らは対照的だ

お酒を飲みながらただ月を見上げるだけだけど…賑やかな昼間と違う。嫌いなわけじゃない、けどこんな静かな夜もたまにはいいな



『元就さん、まけまけいっぱい入りまーす』

「なっ−…我はもうよいっ!」

『…私のお酌じゃダメですか?』

「毛利…女に注がせといてそりゃねぇぜ?」

「黙れ長曾我部!雪子、貴様まさか酒の匂いだけで酔えるのか?」

『あははー、まさかぁ。次、入りまーす』

「酔うておるではないかっ!!」

『酔ってません。ちょっと気持ちがふわふわするだけです。元親、まけまけいっぱーい』

「おう!」

「それが酔うておると言うのだ!貴様もいつまで飲み続ける気だ!?」



テンション高くヘラヘラと笑う私達に対し、元就さんは胃が痛いと言わんばかりの顔をする

けど部屋に戻ったりはしないから、一緒に月見はしてくれるらしい





『あ、かぐや姫って知ってます?月のお姫様と帝の話』

「あ−…求婚してくる奴等に無理難題言う話だろ?」

「男共はかぐやの手のひらで踊らされているだけぞ」

『うわ、元就さんの言い方。夢がないですよ』

「ふんっ」



結局…かぐや姫は帝に不死の薬をあげて月へと帰ってしまった

帝も帝で、せっかくの不死の薬を焼いてしまったと言う。なんとも報われない話だ




「ガキの頃は解らなかったが…今思えば馬鹿な男だよな、みすみす帰しちまうなんてよ」

『帝?』

「好いた女なら戦ってでも取り返せよなぁ」

「ふん、だから貴様は阿呆よ。天の使いに人間ごときが敵うものか」

「あ゛ぁ?ならテメェはどうすんだよ!」

「不死の薬をもろうたではないか。再びかぐやが現れるまで待てばよかろう、気の短い奴め」



うわぁ…私を挟んで元就さんと元親がロマンチックなのか違うのか、よく解らない話を始めてしまった

と言うか、元就さんだって酔ってるじゃないですか




「雪子!」

『は、はいっ!!?』

「やっぱ戦って自分を奪うくらいの度胸ある男がいいだろ!!?」

「薬を渡したかぐやの意図も汲めぬ阿呆なんぞ誰が選ぶか」

「あ゛ぁ!?待ってるだけなんざ男じゃねぇよ!なぁ雪子っ」

「得策と呼ばぬか。貴様も阿呆は嫌であろう、雪子」

『え、と−…』




私は…





『い、一途に思ってもらえるなら…嬉しい、です』

「っ………」

「…………」

『あ、はは…かぐや姫と帝は逢えたんでしょうか?』



かぐや姫に続きはあったかな?

たしか天人の衣を着た彼女は、感情を失ってしまったようだけど



「ふん、天人の衣なんぞ我が焼き落としてやるわ」

『あれ?さっきは人間じゃ敵わないって…』

「我の敵ではない」

『えぇ−…』

「俺だって待ち続けてやるさ!むしろ逢いに行くぜっ!」

『月面着陸っ!!?』

「貴様には無理ぞ」

「なんだと…!?」



やっぱり二人の意見は、どう足掻いても交わらないらしい

再び睨み合いを始める二人の間で見上げた月は、やっぱり綺麗な真ん丸だった





1003
キリ番50000
夜月様
瀬戸内でほのぼの

ただ酒飲んでるだけですすみません

 


mae tugi

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