You Copy?
「あ?雪子は起きてねぇのか?」
「おはよー、姫さんならまだ部屋みたいだよ」
寝癖のついた頭を掻きながら起きてきた西海の鬼
その大きな欠伸に苦笑しながら答えれば、佐助の視界の隅に落ち着きのない男が見える
「三成…そうウロウロと歩き回るでないわ」
「しかし刑部!!雪子様がこの刻になっても起きないことがあったか!?ご気分が優れぬのだろうか…」
「なんならオレが見て来…なぜ止める、小十郎」
「勘にございます。政宗様一人、雪子の部屋に行かせるわけにはいきません」
静かに睨みあう奥州組に、未だ落ち着きのない三成。そんな彼らを鼻で笑った毛利は黙々と朝刊を読み進めていた
「佐助、風魔殿も見えぬぞ」
「風魔?別に腹減ったら出てくるんじゃないの?出てこなくてもいいけどね」
「ふむ…んー…そう言えば某、ずっと気になっていたのだが…」
佐助の作った朝食。それを一口つまみ食いしながら幸村は首をかしげた
「風魔殿はどこで眠っておられるのだ?」
「長曾我部、貴様らの部屋ではないのか?」
「は?俺はてっきりお前や石田の部屋で…」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
…………。
バッ!!!!!
幸村と三成以外の視線が天井の上、雪子の部屋へ向けられた!
「ま、まさかのまさかってこと…!?」
「ヒッ…まぁ待て、まだそう決まったわけではない、落ち着きやれ」
「大谷…テメェも数珠が震えてるぞ」
「あの阿呆が…!!」
「おい、毛利っ!!?」
勢いよく立ち上がった毛利はズンズン足音を鳴らしながら、階段めがけて進んでいく。もちろん目的地は雪子の部屋
もし本当にそこに風魔が居るならば、朝から流血沙汰は間違いないだろう。それを止めようと元親が手を伸ばす
すると…!!
バッ!!!!
「っ!!!!!!」
「うぉっ!!!?」
「風魔っ!!?」
何処からともなく現れた風魔が、黒い羽と共に二人の間へ着地する
唖然とする面々だが、すぐに毛利がその肩を掴んだ
「貴様…!此方に落ちてから何処で就寝しておった!返答によっては−…!!」
「っ…………!!!」
「ん…?」
グイッ、と毛利に差し出されたもの。それは小さな人の形をしていた。キョトンとした顔で毛利を見上げる幼女
バッチリと目が合えばヘラァと笑顔を向けてくる。彼がいつも阿呆と罵る笑みに似ていた
「…風魔、この童はまさか…」
「…………」
『おにぃちゃんいっぱい!』
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「Hey、そりゃ雪子のbaby…ぐはっ!!!!」
「政宗様ぁぁぁぁっ!!?」
大谷と毛利の一撃が政宗に決まった
「えぇー…この子、本当に姫さんなの?」
「風魔!貴様、雪子様を何処かへ連れ出したのではないのか…!?」
「…………!」
「朝見ればこのお姿だった…?記憶も無いと言うかっ」
「石田、なんで風魔の言いたいこと分かるのさ」
「勘だっ!!!」
『ごろごろ〜』
「ヒヒッ、われらのことは覚えておらなんだか。しかし怖がりもせぬとは童でも雪子、聡い子良い子よ」
「なにを暢気な…」
渦中の雪子は大谷の膝の上、コロコロと数珠を転がし遊んでいた。その姿は5つ前後か、相変わらず人見知りはしなかった
「おい、大谷。いい加減雪子をこっちに寄越せ。テメェばっか膝に乗せやがって」
「はて、われは知らぬ。雪子がわれの膝を選んだだけよ。鬼の貴様に童は似合わぬ」
『おにさんですか!ゆきこをパクリですか!』
「食わねぇよっ!!」
大谷が恐ろしやと耳を塞ぐ仕草をすれば、雪子も真似て小さな耳を隠す。手を離しては塞ぐをしばらく繰り返し、彼女はきゃっきゃと笑いだした
「ちょ、まじ姫さんちょうだい。和む、めちゃめちゃ和むから」
「猿飛!次は俺だっつってんだろ!」
『おさるさんですか?』
「そうだよー、おサルのお兄ちゃんだよ。雪子ちゃんおいでっ」
「テメェら雪子を戻す気あんのか…?」
「なに言ってんの独眼竜。いつも世話してくれる姫さんが小さくなったなら、俺様たちが守ってあげるの当然でしょ?」
「佐助、本音は?」
「小さいうちに好印象与えてたら、元に戻った時俺のこと好きに…って、何言わせんの大将っ!!!」
「見損なったぞ佐助ぇぇぇっ!!!!某が成敗してくれるっ!!!」
「雪子、こっち来とけ」
『あいっ!』
元親に呼ばれトテトテと佐助から逃げてくる雪子。幸村の射程から外れた瞬間、見事な槍さばきで佐助を殴り飛ばした
「……って、おい!何すんだ石田っ!!!」
「こちらの台詞だ!この緊急時に雪子様に汚れた下心で触れるなっ!!!」
『うー?』
一方で元親に歩み寄っていた雪子だが、もうすぐ手が届くというところで三成が抱き上げてしまった
もちろん不服を唱えるが…否定はできない
「雪子様、いくら貴女様が私をお忘れになったとしても、この忠義に変わりはありません!」
『ちゅーぎぃ?』
「やれ三成、今の雪子に言うても解らぬ。雪子、この三成がぬしと遊んでくれるそうな」
『ほんとっ!!!?』
ぱぁっと笑顔を輝かせた雪子は、自分を抱く三成を見上げる。そして…
『おにぃちゃんだいすき!』
「っ!!!!!!!!!!?」
『う?』
ゆっくりと膝をつく三成に、その場の全員が盛大に舌打ちした
「な、なんだ…なんだこの背徳感と愉悦は−…!!」
「三成よ…間違った道に進むでないぞ」
「…Hey、小十郎。今の石田を一発殴っていいか?」
「止める理由もありませぬ……あ」
「いつまで崩れておる気だ貴様はぁぁぁっ!!!」
「ぐはっ!!!!」
「…毛利に先を越されたか」
「我慢ならなかったのでしょうね」
→続く
ちなみに小太郎君は雪子の部屋で寝てませんよ←
mae tugi