You Copy?
『…彼は何者ですか』
「石田三成…太閤亡き今、日ノ本の西軍をまとめる男よ」
『い、石田三成…!』
また有名な武将が来たな。石田三成…彼は私が着替えると言った瞬間、光の速さで飛び出していった
そして包帯な彼は…大谷吉継さん。まじか
『けど…なんであんな嘘ついたんですか？』
「はて、われは生まれてこの方嘘などついたことない故」
『う・そ・だ』
「ヒヒッ」
至極楽しそうに笑う大谷さんだがヒッと掠れた笑い声をあげ、次には声を潜めて話しだす
「なに…この奇妙な現象にわれも戸惑っておるのよ。だが、ぬしに厄介になるのが得策とふんでなぁ」
『…………』
「ああでも言えば三成も逆らわぬ。むしろぬしの忠実な犬よ、ヒヒッ」
『えぇ−…』
確かに刀を向けられるよりはいいけど…犬は、なぁ。いや、さっきは首を斬られたわけだし複雑だ
『…けど本当に…兄さんと秀吉さんってソックリなんですか？』
「それは真実よ。われもまこと驚いた…もしやこの奇怪と因果があるやもしれん」
『…………』
因果…兄さんの死に立ち直り始めたこの時期に、我が家に戦国武将が落ちてきた。しかも皆が妙な鎧を身につけ、少なくとも私の知る毛利元就や石田三成ではない
…………ん？
『…忘れてた』
「？」
『ここに居るの、私だけじゃないんですよね』
「…………」
大谷さんとゆっくり顔を見合わせた。次の瞬間…!
「長曾我部元親ぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「なんで石田がいるんだよっ!!!!」
「…………」
『ああ、元親と知り合いだったんだ、三成』
私が言うより先に元親と三成の叫ぶような怒鳴り声が聞こえた。さすがの大谷さんも驚いたようで、目を見開いている
弱ったな…なんか危ない。特に元親は今、丸腰だからまずい
「大谷…貴様もか」
『あ、元就さん』
「毛利…」
「騒がしいと思えば石田が来たのでな。阿呆は阿呆同士相手にさせておく」
ふんっと鼻を鳴らした元就さんだが、つまりは逃げてきたらしい。ぎゃんぎゃんと二人が騒ぐなか、彼はどっかり腰を落ち着けた
「さて…我も貴様らと同じように飛ばされてきた。大谷、何か気づくことはなかったか？」
「いやなに、皆目検討もつかぬ。われは軍議のため三成を探しておっただけよ」
「…我も同じようなものぞ」
どうやら…二人は知り合いだったようだ。そして飛ばされる直前の情報を交換している…が、気になることはないらしい
「暴れている阿呆も気づくことはないらしい」
「そうか…しかし、手がかりとなるはやはりこの娘か」
「なに…？」
『…………』
私はもう１つの写真立てを手に取り(さっきのは三成が持っていった)、元就さんに差し出す。そこには高校生の私と…兄さん
やはり彼も驚いた
「…豊臣か」
『いえ、私の兄です』
「っ!!!?」
「ヒッ…ヒヒッ、この娘の兄は太閤と瓜二つ。三成もそれを知り、こ奴に忠義を示しよった」
「…………」
うわ、元就さんが「なんで先に言わねぇんだよお前」っぽい顔で睨んできた。だって豊臣秀吉の顔とか知らないですもん
しかも絶対、私の知ってる秀吉じゃない。私の兄は秀吉じゃないんだ
「…まぁよい。石田を手懐けたと言うなら、先に奴を止めて参れ」
『えぇ−…刀、怖いです』
「なぁに、ぬしが一言、捨ててしまうぞと仄めかせばイチコロよ。三成はたいそう素直故」
『あれ？私の記憶じゃ石田三成と大谷吉継って親友だったのに、おかしーなぁ』
でもこのままじゃ元親が刻まれてしまうかもしれない。それはあまりにも…だからとりあえず、大きな犬さんを止めに行こうか
重い足を引き摺りながら、私は自分の部屋を出ていく…ああ、まだ、着替えてないのに
mae tugi