You Copy?



『ただいまーっ』

「?」

『あ…今帰ったぞ、的な挨拶。ただいまーっ』

「おう、ただいまーっ!」

「ふんっ」



帰りついた瞬間、元就さんは手を放して奥まで行ってしまった。まぁこの数時間で彼の性格はそれなりに理解したつもり

私は元親からコンビニ袋を受け取り中身を取り出す。歯ブラシは…後でいいか




『元親、私着替えてくるから。手を洗っといて欲しいな、ここをひねれば…水出るから』

「うぉっ!!?すげぇなやっぱ…」

『あは、逆にひねれば止まるからね』



新しく何かを見せるたび、反応してくれる元親に炊事場の説明を簡単にしておく

元就さんもチラリとこっちを見て、また何処かに視線を向けた。まぁ、今日は疲れてるだろうから明日以降詳しく説明しようかな



『じゃあ、着替えてきまーす』

「おう、気をつけな」

『えぇ−…何に気をつけんの?』



元親に見送られ自分の部屋に入る。あー、私も疲れた。今日はいろいろありすぎたな。兄さんが死んでから、こんなに喋った日はなかったかもしれない



『えっと…電気…』



壁づたいに電気のスイッチを探す。早く着替えて戻らなきゃ元就さんが機嫌悪くなるかもしれない。遅いって

指先に触れたスイッチ。それをパチリと付けた瞬間…





「動くな」

『きゃ…ぅっ!!!?』



ガッと後ろ髪を誰かに掴まれ、悲鳴が上がる前に床へと押さえつけられた。低く突き刺さるような声に命令され、ヒヤリ背筋が凍りつく

誰…え、また、不法侵入者?また殴られる?いや、違う、これってまさか…!!



『(か、かか刀ぁぁぁぁっ!!!?)』

「…………」

『っ…………』



視界の隅に映るのはテレビでよく見る刀だった。ぐっと背中を踏みつけられ、刀は私の首筋に添えられる

震える体とは反対に頭の中は冷静だ…彼は、元親たちと同じ?戦国時代から来た人?



『ぁ…あのっ…』

「貴様…何者だ」

『え…』

「家康の手先かっ!!!私たちをどうするつもりだっ!!!!答えろっ!!!!」

『ひっ…!!!』



ああ、まずい、彼は元就さんと違って冷静に話を聞いてくれないタイプらしい。今だってチクリと首筋が痛んだ。斬れた、斬れたよねこれ

しかも“私たち”…他にも来てしまった人がいるらしい。今度ばかりは本気で殺される…!!



『わ、た…しはっ…!!』

「…………」

『ぅぐっ…!!』



私を踏みつける力が強まった…残念ながら、私は非力な女子大生。武器を持つ男…しかも戦国武将相手じゃ助けを求めるしかできない

叫べば…きっと元親が来てくれる。元就さんは分からないけど。しかし彼の武器は現在、兄さんの部屋に置いてある。それを取りに行く暇なんてないだろうから…やっぱダメだ、彼が危険だ



「貴様ぁ…!!」

『っ………に、ぃさ−…!』

「やれ三成…女が泣いておろう、足を退けてやれ」

「しかし刑部っ…!」

「三成」

「っ…………チッ」



誰か知らない…もう一人の声が部屋に響いた。すると私を踏んでいた足が消え、急いで体を起こす

涙でぐしゃぐしゃな顔を上げれば…目の前にはやはり鎧を身につけたお兄さんが立っていた



『ぁ…!』

「答えろ。ここはどこだ、貴様は何者だ、私たちを拐って何をするつもりだっ!!!」

『な、何もしないです落ち着いてくださいっ!!!あの、えっと、私は−…!』

「貴様が落ち着けぇぇぇぇぇっ!!!!」

『ひぃぃぃっ!!!』

「三成…」



素敵な前髪の彼を止める…えっと、包帯姿な男の人。なんだか背後に玉が浮いてる気がするけど気のせいだ、うん



「ヒヒッ…三成がすまなんだ。われらも理解できぬでなぁ」

「刑部っ!!!女に近寄るな、どんな術を使うか…!!」

『あ…の…ここは、平成、という時代でして…』

「へいせい?」



斬れた首筋を押さえながら、恐る恐る彼らに説明を試みる…が、しかし、やはり信じてはくれないようだ。特に三成と呼ばれる人

さっきからずっと刀先を向けてくるし…ああ、まずい、あまり遅いと元親たちが来てしまう



「ぬしは…われらが時を越えたと申すか…?」

『は、はい…』

「世迷い言をほざくな!やはり刑部、この女は家康の…!!」

『ひぃっ!!!』



刀の側面で顎を上げられた。これはあれか、首を斬りやすくするためか。ああ…せっかく元親や元就さんと仲良くできるかもしれなかったのに

…兄さん、本気で兄さんの所に行けそうです





mae tugi

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