You Copy?
『ごめんね、残り物で作った朝食で。今日は買い出しに行くから』
「いいんじゃねぇか?どんな料理でも雪子が作ったもんは旨いし」
『元親ってば朝から調子いいね〜、お味噌汁おかわりいる?』
「雪子殿!某にもくだされっ!!」
『はーい』
「……雪子」
『なんですか片倉さん』
「テメェ…その状況によく平静でいられるな」
朝食をみんなで囲んでいる時、片倉さんが不愉快極まりないという風に聞いてきた
彼の言う“その状況”とは…
私を挟んで三成と小太郎くんが睨みあっているってこと
「気にすんな小十郎。今さら忍が一匹増えたって大差ねぇ」
「何を呑気な!風魔と言えば見た者が居らぬという伝説の…!!」
『え、小太郎くんって伝説なんだ、すごいね』
「…………」
「風魔ー、その得意気な顔やめて、朝から血を見たくなるから」
『猿飛さん、私は見たくないです』
物騒なことを言う猿飛さんを制し、お味噌汁を入れるために台所へ…そしたら、小太郎くんがついてくるじゃないか
『大丈夫だよ、お味噌汁入れるだけだから』
「…………」
『んー…じゃあ、お願いしようか…』
「させぬぞ風魔っ!!!」
『うわっ!!?』
かと思えば今度は三成が追ってきた。私が言いきる前にお椀を奪い小太郎くんを睨む
えぇ−…朝から喧嘩ですか
『ちょ、三成!』
「突然現れたかと思えば雪子様にベタベタベタベタと…何のつもりだ!」
「…………」
「雪子様は私の主!私は雪子様の第一の家臣!忍ごときがでしゃばるなっ!!」
「…………!」
「私の方が先に家臣となった!!」
『待て待て落ち着け。あと三成、何故に小太郎くんと会話できてる』
「勘ですっ!!」
『まじかっ!!』
何か通じあうものがあるのか、小太郎くんと一方通行な会話を繰り返す三成。小太郎くんも合っているのか小さな反応は返す
三成が起きてきてからずっとコレだ。大谷さんが数珠で殴って止めなければ、もっとたいへんなことになってたと思う
『み、三成、落ち着いて…』
「雪子様っ…!!私が不甲斐ないからですかっ−…!!」
『はい?』
「私独りでは…お守りでき、ませんか…!!だから、忍を雇うなど…」
「可哀想よな三成…雪子が泣かしよった」
『えぇー…』
そんな捨てられた子犬みたいな目、しないでよ三成。小動物に弱いんだぞ私…いや、小さくないけど
居間でもお腹すかした犬が二匹待ってるのに
『三成は私を守ってくれてる、充分に』
「し、しかし…」
『これから仕事も多くなるから。その時は真っ先に三成にお願いするよ』
「…………はい」
『よし、いい子いい子』
「っ!!!!!!」
私の言葉にしぶしぶ納得した三成。そんな彼の頭を…本当に条件反射で撫でてしまった
すると途端に真っ赤になった彼は、カチンと固まって動かなくなる。あ…新しい技を身に付けたかもしれない
「…俺様も手伝ってこようかなー」
「猿、テメェはもっと下心を隠せ。仮にも一端の忍だろ」
「今は休業ちゅー、姫さんに頭撫でてもらえるんだよ?俺様も雇われようかな…右目の旦那は羨ましくないの?」
「誰が−…!!」
「貴様ら…黙って飯も食えぬか」
『お待たせっ』
元親と真田くんにおかわりを渡し、再び朝食に戻る。やはり三成と小太郎くんは離れてくれない
まだ顔の赤い三成…なんだか、小太郎くんは機嫌悪いよどうしたの
『三成、お願いがあるんだけど』
「なんでしょうか」
『兄さんの部屋に鋏あったでしょ?取ってきて欲しいの』
「はいっ」
小さな頼みだけど約束通り、三成にお願いして鋏を取ってきてもらった。ありがとう、と受けとればどこかご満悦気味な彼
「…それは何でしょうか?」
『気分カードよ。よし、小太郎くんっ』
「…………?」
画用紙に描いた喜怒哀楽笑の文字。鋏で切り取ったそれに穴を開け、リングで繋ぎ、小太郎くんを呼んだ
サッと現れた彼はカードを受けとると、不思議そうに首をかしげる
『小太郎くんは声を出さないでしょ?三成みたいに勘じゃ会話できないし…私以外となら筆談はできると思うけど』
「…………」
『だから、せめて今の気分だけでも知りたいの。何かあったら遠慮なくコレを見せてね』
「…………(喜)」
『うん!そうそう、よかった喜んでくれて』
パッと喜のカードを出す小太郎くん。手元で数回カードを揺らすから、とても喜んでくれてるらしい
カードを入れる袋もあげようか
「…………」
『…三成?』
「い、いえ…何も…」
「…………」
「…何か文句でもあるのか風魔」
「…………」
「べ、別に貴様が羨ましいわけではないっ!!それは貴様を憐れんだ雪子様の御慈悲だっ!!」
「…………(笑)」
「っ!!!!!?き、さまぁぁぁぁっ!!!!!!」
「…………(笑)、(笑)」
『あ…』
笑のカードをひらつかせる小太郎くんを追って、三成が駆け出して行った…小太郎くんは気分カードの悪い使い方を覚えてしまったようだ
で、あの二人は…なんだかんだで仲良しなんじゃない?
mae tugi