You Copy?
『あ、おはようございます猿飛さん。眠れましたか?』
「…あははー、まぁまぁかな、なんて…」
正直な話、眠ってない
もともと忍である以上は、浅い眠りだし今はわけも解らない“未来”にいる。爆睡する大将の隣で朝が来るのを待ってたわけだ
途中、朝方に気配がして。でも姫さんだと分かったから気を弛めた。そしたらどうしたって、急に姫さんと別の気配がしたじゃないか
「…見に来てみたら、なにこれ」
『小太郎くんです』
彼女の隣で朝食の準備をする伝説がいた
「…あれ、おかしいな、俺様まだ夢見てるのかな」
『ですって小太郎くん。冷たいお茶でも飲んだら目も覚めるかな』
「…………」
『あ、小太郎くんがお茶を出してくれましたよ猿飛さん』
「えーと…とりあえず姫さん」
『はい』
「…風魔も落ちてきたんだね」
『はいっ』
「ハァァァ…」
何にため息をついたって、呑気な姫さんもそうだけど、自分に呆れたんだよ
いくら風魔が気配を消してたからって、それに気づけなかった。もし彼女に何かあったら…どうしてたつもりなんだ、俺
「…いや、今さら風魔が落ちてきても驚かないけど…何もされてないよね?」
『…………ダイジョブデスヨ』
「ちょ、え、何かされたのっ!!!?」
『し、してないですよ、ね、小太郎くん!』
「…………」
「…おい風魔、今アンタ…視線そらしたよな」
『気のせいです!て言うか小太郎くんの目、見えないじゃないですか!』
「…大丈夫って、毛利の旦那や右目の旦那の目を見て言える?」
『う゛……』
アワアワと落ち着かない彼女を問い詰めていたら…噂の毛利の旦那が起きてきた
あー…確か毎朝日光浴するんだっけこの人。でも丁度よかった
「おっはよー、旦那」
「…猿の分際で我より先に起きるとは…雪子、茶を出…」
『…………』
「…………」
「…………何故…北条の忍がいる」
「落ちてきたってさ。しかも何かされちゃった後らしいよ」
「…………」
『ひぃっ!!!?』
朝から鋭さ絶好調な旦那の視線が姫さんを射る。姫さんは姫さんで「何で言っちゃうのバカじゃない」って目で俺を見てくるし
「だって俺様も心配なんだもん」
「貴様…何度申せば理解するのだ…!!」
『だ、だって助けを呼ぶようなことじゃ…いや、なんというか…』
「…………」
『すみませんでしたぁっ!!!』
毛利の旦那が手を振り上げれば、姫さんが頭を抱えて縮こまる。これは昨日も見た風景。けど…
「…貴様、何のつもりぞ」
「…………」
旦那が振り下ろす前に風魔が間に立ち塞がった。この時代に来て初めての生々しい殺気に俺は身構えるし、旦那の目も変わる
それを止めるのは姫さん
『小太郎くんっ!!これは元就さんの説教で…私を心配してやってくれてることだからっ』
「…………」
「…姫さん、風魔と契約したわけ?」
『え、いや、私が衣食住を提供するから…小太郎くんには家事の手伝いお願いしたん…だけど…』
「…雇っちゃったんだね、伝説の忍」
『あははー…』
…なんて姫さんだよ、この子
まぁそれならひとまず安心か。彼女が主である以上、風魔は彼女を傷つけるはずがない。ただ命令を聞くだけ、忍とはそういうもの
毛利の旦那も分かってるらしく、殺気は薄くなった…あくまでも薄くなった
「毎日増えるんじゃきりないよ…風魔が最後ってのを願うね」
『ですねー、あ。小太郎くん、味噌をとって欲しいな』
「…………」
「え、風魔にれいぞーこってやつ教えたの?」
『ガスもレンジも使えますよ、小太郎くん。物覚えいいし手先も器用で助かります』
「…………」
「…………ムカッ」
「猿の分際で対抗意識を燃やすでないわ」
「別に燃やしてないんですけどーっ!風魔の顔がムカツクだけなんですけどーっ!!」
「…………」
『騒ぐ暇あるなら手伝ってください!あと、今日は雨ですよ元就さん』
「なに…?」
mae tugi