We Copy !!



「…これはまた、ずいぶん立派な笹を手に入れたな雪子」

『あ、大谷さんいらっしゃい!これ、朝から兄さんが取ってきてくれたんですよっ』

「知り合いに頼んでな。朝一番、山から抱えてきた」

「…流石は吉郎よ」

『ってことで、はい!これ、大谷さんの短冊ですっ』




夏の湿った風に揺られわさわさとたなびく大量の笹。それを庭に設置し終えた頃、大谷さんがうちにやってきた

今日は七夕。いつものメンバーを集め七夕パーティーの予定です




『今日の料理はお星様たくさんですよ大谷さん!』

「ふっ…吉継は星が好きだったな。今夜は存分に楽しむといい」

「いや、それほど好きなわけではないが…」

『さんざめくーっ!!』

「降り注げっ!!」

「ぬしら、われを馬鹿にしているだろう」




短冊をひらひら指で遊ばせながら、ちょっとだけムッとした顔になる大谷さん

すみません、調子に乗りすぎました。でも兄さんも含め、みんな楽しみにしてるんですよっ




『サラダの野菜も星形にして、ご飯も型でお星様にします。デザートもですよっ』

「ヒヒッ、それはまた。流れ星ではなく天の川をつくるか。雪子の腕ならば安心よ」

「半分は俺だけどな」

「……片倉もいたか」

「雪子だけであの量は大変だからな。助っ人として呼んでおいた」

『片倉さん、見た目に反して本当に細かい作業が得意なんですよねっ』

「見た目の話は余計だっ!!」




台所からやってきて、庭に顔を出す片倉さん


昔から兄さんたち同窓組は、パーティーの時にいつも集結するんだ

その中でも大きくて力持ちな兄さんは設営。そして片倉さんは言わずもがな料理担当です




「七夕ケーキを作る余裕は無かったけどな」

『ご心配なく!ケーキは……まさかの元就さんが買ってきてくれます』

「元就ならば心配ないだろう。あいつのことだ、ケーキ選びのセンスもあるはずっ」

「…相変わらず、吉郎の毛利に対する信頼はすごいな」

「策士め…先に三成か真田あたりに任せておけばよかったものを」

『三成と真田くんは、運んでる間にケーキをぐちゃっとしちゃいそうですけどね』




他にも飲み物は元親と家康くんが買いに行ってくれてるし、政宗さんと佐助さんは…仲良くかは分からないけど大学から一緒に来るみたい

小太郎くんは時間までにお仕事、ちゃんと終わるかな。松永さんも誘ったけどどうだろう、あと…




「む…いかん!流石に笹が多かったな、倒れそうだ」

「吉郎、ロープか何かあるか?雨樋に引っ掛けておこう」

「ああ、手伝ってくれ片倉。部屋にあったはずだ」

『お願いね兄さん、片倉さんっ』

「…今宵の吉郎はずいぶん張り切っておるわ。何かあったか?」

『そりゃ久々の集まりですからね!兄さんも好きなんですよ、賑やかなの』

「ヒヒッ…そうか」




庭に残された私と大谷さん。彼の手にはまだまっさらな短冊がある

私もまだ書けてない。悩みますよね、七夕って。小さい頃はお願い事もたくさんあるから、何枚も何枚も書いてましたけど




『大谷さんは何て書きますか?』

「さて…この年になれば、そう願うことも思いつかぬゆえ。雪子はどうだ?」

『私も悩んでます…だって私は今、欲しいもの全部手には入ってますから』

「ほう…」

『みんながいますっ』





そうだ、だから今をお願いしよう。ずっとずっと今が続きますようにって。明日も今がありますようにって

そう言ったら大谷さんは私の隣でクツクツと笑う。私、何か変なこと言いました?




「いや、ぬしもなかなかに酷な願いを言う」

『へ?』

「彦星殿と織り姫殿は、共にいることを認めてもらえぬ星よ。それに当てつけのような願いを届けるか」

『はっ!!た、確かに…少しは気を遣ってあげないと!』

「ヒヒッ…ならば話は別よ。われも願いを考えてみるか」

『彦星さんと織り姫さんに言っても地雷にならないお願い事…!』




…本来の趣旨とズレてる気はするけど、大谷さんと一緒にお願い事を考える

一年に一度、晴れた七夕にしか会えない二人だもの




『…無事、就職できますように、とか?』

「おお、無難よ。それでいくか」

『夢がないですっ!!確かに二人とも、会うために毎日お仕事頑張ってますけどっ!!』

「なればこそよ。雪子も織り姫を見習うがよかろ」

『…私は将来的に、彦星さんの専業主婦になりたいです』

「まずは彦星を探せ」

『彦星さん、さんざめく降り注げーっ!!』

「ヒヒッ、ではそれを願うか」

『むむっ…!』





…良いご縁がありますように


縁結びの神様にお願いするような内容だけど、女子大生にしては無難な短冊だと思う

それを兄さんに見つかりにくい場所に吊し、持っていたペンを大谷さんに渡す。さあ、次は貴方の番です大谷さん!





「雪子の願い事の成就と書いてやろう」

『あ、ずるいっ!!じゃあ私も書き直します、大谷さんの昇進って!』

「われは地位など興味がない。ほれほれ、書いたゆえ吊してくれぬか」

『あ、本当に書いてるっ!!もう…せっかくだから、自分のお願い書けばいいのに』

「いや、間接的にはわれの願いよ」

『え?』

「雪子の願いを叶えてやれば、比較的、楽にわれの願いも叶えられるというものだ」




ヒッヒッヒと笑い、ニタリと口元を歪める大谷さん

そして私と同じく、見つかりにくい場所に短冊を吊した…もうすぐ、兄さんたちが戻ってくる





『はっ…!大谷さんも片倉さんみたいに、私が嫁入りできるか心配なんですかっ!?』

「それも心配だが別の話よ。まぁゆるりと考えるがよい、次に彦星と会えるまで時間がある」

『は、はあ…』

「ヒヒッ…む、おお、見よ雪子。うっすらと天の川が見え始めた」

『え?あ、本当ですっ!!もっと暗くなったら、すごく綺麗に見えるでしょうねっ』

「ああ」




笹から視線を外し、一緒に見上げた空は夕暮れも過ぎて薄暗くなっていた

そこに流れる天の川。こんなに綺麗に見えるなんて…やっぱり七夕効果なんでしょうか





『…これだけあったら一つくらい、流れ星さんがいてもいいのに』

「では願ってみるか?」

『えっと、じゃあ…今年こそ彼氏ができますよーにっ!!』





バサバサバサッ!!!





『あ゛』

「ああ…」

「・・・・・・」





大きな音に振り向けば、頭を抱える片倉さんと…ロープの束を落として固まる兄さんがいました





20160707.
さんざめけ七夕祭り!


mae tugi
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