We Copy !!
「さぁホトトギス、この三着のうち好きなスカートを選びたまえ」
『うーん、どれも可愛いから迷います。強いて言うなら右端の…』
「迷うならば全て買うとしよう」
『選択肢の意味とはっ!!?』
「では次は靴を選ぼう。迷う暇はないよホトトギス、まだ四店舗しか立ち寄っていないのだからね」
『四店舗、もっ!!!』
休日の今日、素人目でも高いって分かる外車で我が家に乗り込んできた松永さん
いつものように連れ出され、やって来たのは敷居の高い洋服屋さん。そしてこれまたいつものように、可愛くて0が多い服を次々買っていく…う、嬉しいですけど!嬉しいですけれどもっ!!
「私が君を着飾りたいから買っているまでだ。そう萎縮しなくていい」
『そ、そうですか…?』
「むしろ、もっとおねだりしてくれた方が私も購入しがいがあるというものだよ」
『で、では、お言葉に甘えて……実は新作のカバンが欲しかったんですっ!!』
「ははっ、君のその切り替えの早さは実に好ましい。では行こうか」
『はいっ』
甘えろというならとことん甘える、それが私のモットーです!
上機嫌な松永さんにエスコートされ、次のお店を目指す私。選びかけだった靴は、やっぱり松永さんが全て購入しちゃいました
『うぅ…嬉しいですけど松永さんに買ってもらった諸々で、クローゼットがいっぱいになってもう入りませんっ』
「ほう…ならば次は、収納の行き届いた別荘のおねだりかな?」
『安い服を倉庫にぶち込みますっ!!』
「それは残念だ。だが、そのうち考えてくれたら嬉しい限りだよ」
『ぐぐっ…松永さんのこなれた感、素敵ですが心臓に悪いです…でも、』
「ん?」
『松永さんはセンスも素敵なので、家をお願いするとお城みたいになりそうですねっ』
「なるほど…城には憧れがある、か」
『そりゃお姫様とお嫁さんは、女の子の憧れですもんっ』
松永さんはいつも、私をお姫様扱いしてくれますけどねっ!!
おだてるのも甘やかすのも上手い松永さんといると、自分がどこかの高貴な生まれだと錯覚するんだ
…それは以前も今も変わらず。いや、むしろ過剰になっているかもしれない
「何を言うかと思えば…私と出会った時から君は姫君であったはずだが?」
『それはそれで別問題なんですけど…あ、そういえば』
「ん?」
『お姫様と関係するか分かりませんけど、松永さんが選んでくれる服は白っぽいのが多いですよね』
今日買ってもらった服を思い返しても、そのほとんどが淡い色…白を基調としたものばかり
私に似合うものを選んでいるにしても、だ。松永さんは白色が好きなのかな
「言われてみれば確かに…ホトトギスは白が苦手だったかな?」
『そんなことないです!むしろ、白が嫌いな乙女はいませんよっ』
「ほう…」
『だってウエディングドレスも白無垢も白じゃないですか!憧れの色ですもんっ』
「……………」
『……………』
「……無意識とは恐ろしいな」
『へ?』
私の言葉を受け、顎に手を当て考え込む松永さん
え、まさかまた変なこと言っちゃいましたか!失態を心配し固まる私に、彼は違うと首を横に振る
「失態を犯したのは私の方だ…なるほど、そういうことか…」
『えーっと…』
「君を着飾りたいと言いながら、選ぶ色は白ばかり。貪欲の自覚はあったがまさかここまでとは」
『ま、松永さーん?あの、私にも分かるように説明して欲しいんですけど』
「いや…それはいささか時期尚早というものだホトトギス。もう少し、君を可愛らしく着飾る時期も楽しみたい」
『は、はあ…なんだか松永さんの機嫌がさらに良くなったので、私はそれでいいですけど…』
「ふっ…」
『あ、はは…』
クツクツと愉しそうに笑う松永さんの目が、何故だか狼さんに見えたので
私はとりあえず無理やり笑って誤魔化しておいた。いや深く聞いたら負けな気がしたんだ
「…さて、カバンを見たら次はアクセサリーだ。私も下見をしておこうかな」
『し、下見…』
「ああ、サイズはまた改めて相談しよう」
『な、なな何のサイズでしょうっ!!』
「……ははっ」
『あーはははっ…』
20160723.
次の日から松永さんも白い服ばかりになりました
mae tugi