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「暑くなっていくにつれて薄着になる女の子っていいよな」

「あ、分かるー、いいよねスケスケ」

「だなー、あー、最高だよな」

「最高だよねー」

『最低ですね』

「なに言ってんだテメェら…」




何を思い浮かべているかは知らないけど、ニヤニヤと笑う前田と佐助さんに精一杯の冷たい視線を送る。隣の片倉さんも渋い顔

今日は珍しくこのメンバーでご飯を食べてるんだけど、一通りの世間話が終わった頃、冒頭の会話を2人が始めました最低です




「いやいや、別にエロい目線で見てる訳じゃないよ。というわけで雪子、今度俺様と服見に行かない?」

『最低です』

「若気もいいがその辺にしとけ猿飛、前田。酒も入ってねぇんだ自制はしろ」

「そう言ってー、小十郎だって男なんだから好きだろ?こう、ひらひらっとスケスケっとしたヤツ」

「仮にそうだとしても、女の前で鼻の下伸ばして話すなって言ってんだ馬鹿野郎」

『流石は片倉さん、大人ですダンディズム…!』

「これはダンディズムじゃなくてムッツリって言うんだよ雪子」

「あ、なるほど。片倉の旦那ってば職場は男子校だもんねー、そりゃ若い女の子が隣にいたら内心は…」

「いい度胸だテメェら、おら表に出やがれ…!」

『落ち着いてください片倉さん、相手は若気です、若気の至りです』




…でも、男の人ってやっぱりそんなのが好きなのかな。佐助さんみたいに表に出す人はもちろんのこと、片倉さんみたいに、その、表に出さない人も…

じっと下を向けば貧相な自分の身体。前田と佐助さんが言うスケスケ最高は、ただしグラマラスに限るというものだろう




『……………』





やっぱり最低です















『みんながみんな、胸が大きいわけじゃないんです…ぼんっきゅっぼんなナイスバディ、しゅっとしたスレンダー美脚なんてテレビに出る美人さん限定なんです…』

「やれ、今日の雪子はずいぶんとご機嫌が斜めよな。ほれ何を頼む?」

『…デラックスパフェ』

「…かまわぬが今し方、体格を気にしていた女の選択とは思えぬな」

『いいんです今更なんですっ!!今から頑張ったって成長期は終わっちゃってるんですぅうぅうっ!!』

「落ち着け、落ち着け」




その数日後。同じ店で今度は大谷さんとお茶をしていた時のこと

先日の愚痴を半泣きになって話せば、大谷さんはうんうんと頷いて聞いてくれる。男なんてみんな狼なんです




『…片倉さんもきっと心の中では賛同してました』

「否定はせぬがそう言うてやるな。猿や風来坊ほど露骨な男が悪いのよ」

『でもっ世間一般な理想はそれで…女体に夢を見すぎなんです』

「ヒヒッ、三成や真田は世間一般では無さそうではないか。貧乳でも問題なかろう」

『それもそれで複雑な上に貧乳って言われたっ!!せっかく遠回しに話してたのにストレートに貧乳って言われましたっ!!』

「す、すまぬ」




わっと大げさに手で顔を覆えば、困ったように小さく唸る大谷さん。分かってます、面倒な女になってるのは分かってますが許してください

人は見た目じゃない!と言っても見た目がいいに越したことはないだろう。だからってそれを胸に集約するのはいかがなものだろうか、女だって千差万別でそれぞれ違っ…




「では聞くが雪子、ぬしは男に何を求める?」

『そりゃムキムキと隆起する逞しい筋肉……はっ!!』

「ヒッ…ヒーヒッヒッ!!男が皆、ムキムキとは限らぬがっ?男も千差万別、それぞれ違っておる」

『あ…はい、すみません』




お腹を抱えて笑い出した大谷さんに、次は別の意味で顔を覆う私

そうですね、女だって男に理想を求めすぎているのも…まあ、無きにしもあらずですすみません




「ヒヒッ、言うだけならば易かろう。特に猿やわれは雪子の求むムキムキとやらには遠いゆえなぁ」

『えー、でも知ってますよ。大谷さん、こう見えて腕とかいい感じに筋肉ついてますもん』

「そ、そうか…」

『理想的には兄さんや元親みたいな筋肉欲しいですけどね!』

「・・・・・・」

『すみません冗談です!大谷さんも十分素敵です!それに私、理想と現実が合致してるわけじゃないと思うんですけど…』

「ならば奴らも同じよ。あくまで世間一般のそれにつられる若気よ、ワカゲ」

『若気の至り…じゃあ大谷さんはもう、女の人にそんなの求めてないんですか?』

「…われはもう若くない、という意味か」

『すみませんすみませんすみません!大人ってことですダンディズムっ!!』




だってだって、佐助さんや前田…あと元親はもう女といえばコレっ!!て王道が好きそうだから

大谷さんはいまいちそこが読めなくて。片倉さんは硬派だと信じてるけど…




「さぁてどうであろうな。われも所詮は狼やもしれぬ」

『あ、酷い。じゃあ残るのは元就さんくらいですかね、頼みの綱』

「…何故、毛利よ」

『だって元就さん、もう硬派とか通り越して悟りいっちゃってそうです。小太郎くんも狼さんっぽいので、うーん…』

「……………」




あ、パフェがきた

バイトのお姉さんが持ってきてくれたデラックスパフェがテーブルに乗る。大谷さんの前にはブラックなコーヒー

…やっぱり食欲には勝てないよね。それにダイエットしても胸は育たないし




『じゃ、とりあえずいただきま…』

「雪子、」

『はい?』

「…まぁ、結論を言えばアレよ。所詮は惚れてみなければ分からぬ」

『うーん…ですね!大谷さんが言うとそんな気がします、納得、納得』

「…本当に分かっておるのかぬしは、ヒヒッ」





苦笑っぽい笑いを送られ首を傾げるが、彼は気にするなと手を上げる

ちゃんと分かってますよ、どんな人でも好きになったら好みとか関係なくなります




『あ…』

「どうした?」

『…店員さん、スプーンを二人分くれましたね。じゃあ大谷さんもどうぞっ』

「む…」




二人で一緒に食べましょう


そう言ってスプーンを差し出せば、やっぱり分かっていないと頭を抱えられてしまった






20150524.
二人きりになるのは大谷さんが一番多い


mae tugi
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