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『…………』




たどり着いた先は開けた場所だった。私の潜った門と長く続く階段

この先に三成が居るという。そしてもう一人、私は彼に、会いに来た





『大谷さん…』

「……ヒヒッ、来てしもうたか」

『はい、来ちゃいました』

「毛利に任せたわれが間違いか。ヒッ、奴の策もそう役に立つわけではないようだ」

『…大谷さん、』

「アレは今頃、安芸にて長曾我部と居るか。心砕いた雪子がこちらを選んだとなると…いや、それこそ奴の策よ」

『大谷さんっ』

「…………」

『…私は全部を聞いて、それでもここに来ています。だから今さら何を言われたって、逃げたりしません』

「……左様か」



目を細めた彼はそうか、左様か、という呟きを繰り返し深いため息をついた

そして次にふわりと近づいてきて…私の頬に手を伸ばす。久々に感じた包帯の感触



「傷だらけのボロボロではないか。あちこち擦れ、切れておるわ」

『私の怪我なんかちょっとですよ』

「いや…何故こちらへ来た。われは赤いぬしを見たくないと言うたはずよ」

『…………』

「…われらに添い遂げるぬしなど見たくはないと、彼方で竹中殿や前田と居ればよかろう」



何故、われらを選んだ

大谷さんの言葉は少しだけ私を咎めているようだった。ついて来るなと確かに言っていた彼



「もしくは毛利の策に乗り、越後で戦の終わりを待てばよかったものを」

『あ…やっぱり大谷さんも元就さんの協力者だったんですね』

「…………」

『…あは、私にとっては優しいお二人ですから。離れたくなかったです』

「……ヒヒッ、この期に及びそのようなことを言うとは…ぬしは恐ろしい女子よ」

『?』

「そうよなぁ…そもそも、ぬしの元へ落ちてしまったことが誤りよ」



はぁ、とため息をついた大谷さんは天を仰ぐ

それにつられて見上げれば…やはり黒々とした空。星も何の光もない




「…時など止まれと思うた」

『っ―……!』

「ぬしの世の暦を引き破るたび、進まねばよいと思うた。そうはいかぬ…われらと雪子の進む時は違う」

『大谷さん!だから私は、こっちを…!』

「選ばせてしもうた。われの嘘に雪子を巻き込んだだけよ」

『うそ…?』

「ヒヒヒッ!三成に言うたであろ?この女子は太閤の妹君、そして―…」




妹君を守ることこそ、転じた太閤の三成への命であると




「何も三成は、ぬしが縁者であるから従うわけではない。それが太閤の命と信じておるからよ」

『私が…でも、私の兄さんは…』

「嗚呼、解っておる。われのついた嘘故なぁ…だが、アレにとって最早それだけが理由ではない」

『え?』

「ヒヒヒッ!聡い雪子ならば気づいておるであろ?このまま行け、そして三成に言え」

『っ―……!』

「共に来いと…戦を捨てよと。もう少し、われの嘘に付き合い妹を演じて欲しい」

『お、たにさ…!』

「これも義のため…か。三成を連れて地の果てでも別の世へでも去れ、雪子」

『っ、じゃあ、大谷さんもついて来てください!一緒に来てください!』



私に伸ばされていた手を取り彼にすがる

行け、なんて言わないでください。去れ、なんて言わないでください


もう……さよならは言わないでください



『私は大谷さんにも一緒に来て欲しいんです!三成と大谷さん…ここに来て離れた皆も…!』

「…………」

『そのために、私はここに来て…み、んなが居なくなるなら…私も―…!』

「ならぬ」

『っ―……!』

「ヒッ…われの嘘が真であれば、別の謀も道もあったものを…」

『それはどういう…?』

「ヒヒヒッ!いやなに、三成よりも気づくのに遅れてしもうただけよ、だが…」




こんな感情など、気づかぬ方が良かったものを




「……行け、三成を言いくるめる時間くらいはできよう」

『っ、大谷さん!貴方も行くまで私は行きませんから!』

「聞き分けのない…」

『聞き分けが良かったら初めから大谷さんの言う通り、向こうに残ってました!』

「そうよな、ぬしは頑固者よ。だが…」

『っ!!!?』

「われも特別、器の広い男ではない故」

『大谷さんっ!!』



グイグイと押し返してみても彼は動かず、逆に私が開いた門の先へと押し出される

どうして、大谷さんも佐助さんも笑って去ろうとするのか…いや、




『逃げたく…ないです…』

「雪子、」

『っ―……!』




結局、私の方が皆のもとを去っていくんだろう

閉まっていく門の向こうに消えていく大谷さんを見つめながら、これを止めることすら私にはできない




『〜〜っ』




時間が、止まってくれない





20131005.
いっそ嫌いになれたらよかった





mae tugi

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