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『やっぱり違う!私の知ってる大坂城と違う!いや、本物は知らないけどさ!』

「…………(笑)」

『黒々として薄暗い…この中に三成や大谷さんが居るんだね…!』



城から少し離れた丘で、私と小太郎くんは大坂城を見つめる。最期の決戦の地。中には三成や大谷さんが居て、真田くんや佐助さんもきっと何処かに陣を張っている

政宗さんと片倉さんも家康くんに合流しただろうか…共に現代で暮らした皆。足りないのは二人だけ




『…大丈夫、まだ大丈夫…!今はあの中に入ることが先決だよね小太郎くん!』

「………(コクッ)」

『堂々とは行けないし…やっぱり抜け道を探さなきゃダメかな』

「強行が最も手っ取り早いと思うがね」

『強行って言っても私じゃ敵味方の判断がつきませ―……へ?』

「外堀を囲っている多くは徳川方だ、中へと入れば多少はましだと思うが?」

『え…へ?あれ?』

「何を…驚いているホトトギス、戦場で会おうと約束したじゃないか」



クツリと笑った彼が隣で私を見下ろす

あの日、雪の中で別れた。その時と変わらない白と黒のコントラスト。彼は―…




『松永さんっ!!!』

「やぁ、見ないうちにずいぶんと逞しい顔つきになったものだ」

『貴方は相変わらず余裕な顔ですね…!』

「…何だねその敵意は。私との再会は気にくわないかね?」

『嬉しいです、けど!松永さんの家紋でいろいろ大変だったんですから…!』



まさか越後でぼっちになった瞬間、忍に囲まれ命を狙われるなんて思わなかった

前田に信じて貰うにも時間がかかったし…!そう言っても彼は可笑しそうに笑うだけで



「不要なら棄てればよいと思うが」

『独りぼっちだった時、心細い時にはコレで元気もらってたんです!』

「…………」

『ん?』



私の言葉に驚いた顔をする松永さん。けどそれは徐々にいつもの余裕な笑みに変わる

気のせい…だったのかな?



「やはり君は妙だ」

『そ、そんな直球で…!』

「いや、それが嫌いではないから困ったものだ。さて、これからどうするか教えてくれホトトギス」

『は、はい!』



松永さんにつられて視線を城に戻す。私に何ができるのか…どうすれば綺麗事を貫けるのか




『家康くんに会ってきました。彼は止まりません』

「ああ、止まれないという表現が近いだろう。彼の理想にあの男は枷となる」

『っ―…でも彼の理想と私の望む結末は、同じはずなんです!』

「…………」

『私は…西に降伏を求めます!』



降伏、それは私が知る歴史の中でのキーワード

この大阪の陣で西は降伏するんだ。もちろん関ヶ原が起こらなかった以上、三成が大将である以上、それが絶対な答えとは限らない



『それでも他にありません!三成に…私の声を届けてみせます!』

「なるほど…私のホトトギスの鳴き声は、かの凶王のためにあるか」

『鳴いてみせますホトトギス!』

「…いや、まぁ、いいさ。実に君らしい」

『………すみません』

「ん?」

『松永さんに会ったとき…松永さんは私の言葉を面白いと、言って着いてきてくれました』



でも結局は貴方の嫌いな綺麗事を私は実行しようとしている

今だって松永さんを関係のない戦に巻き込んでいる。そう言えば彼はやれやれとため息をつき…今更だ、と一言



「…私が居なければ辿り着けないだろう?凶王の元へ」

「…………」

「卿だけでは心許ないだろう風魔。それに私は善意など持ち合わせていない」

『…………』

「…君のように己の弱さを痛感した男を知っている」

『っ―……』

「彼は己の弱さを知り…弱さを罪とし、力を絶対とした」



彼と君は似ているよ、だが君は違う

そう言った松永さんは目を細めて私を見る。鼻を掠めた…花火のにおい



「君は己の無力を知り、それでいて認め、足掻いているじゃないか」

『…………』

「足掻くだけ足掻きたまえ。綺麗事は嫌いだが…それを貫く君の無謀は嫌いではない」

『……はい!もちろん足掻きますよ最後まで!』




また、皆で笑って会うために




『泣きはしません…!さぁ!行っちゃいましょう!』

「…………(笑)」

「クッ……ああ、君の思うようにね」





さぁ、決戦を






20130902.
ついに最期の戦い!
再会と別れと受け止める覚悟を





mae tugi

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