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「っ―………」

「…どうした大谷、何か来たか?」

「いや…ちと、な。心配はあるまい」

「…………」



人払いをした部屋で向かい合うわれら。駒は揃い最後が近い

相も変わらず涼しい顔の同胞に、今日はある話を持ってきたのだ



「長曾我部が…徳川の元へ向かったそうな」

「そうか、思いの外遅かったな」

「ヒッ…ずいぶんと寄り道をしておった故。だがもう終いよ、長曾我部は憎き同志の仇を―…」

「…………」

「…毛利?」




奴の目が、遠くを見た

その先に何があるのかは知らぬ、知らぬがその目…何か引っ掛かる。毛利、ぬしは…




「…大谷」

「……?」

「…奴は、泣くと思うか?」

「っ―……」

「…………」

「…ヒヒッ、そうであろうなぁ。あちらでも散々ぬしに泣かされておった故、泣き止まぬほど喚くかもしれん」

「ふん…アレは我と約束した」

「……は?」

「次、我と会うまでに泣き虫を治すとな。貴様の言う通りならば我はまだ会えぬ」



淡々と答える毛利。われらの言う奴、が誰を示すのか。今更告げる必要もなかろう

そしてまた…ぬしの言わんとすることも



「毛利よ、ぬしは…」

「大谷、長曾我部の動きには注意しておけ」

「む…?」

「…奴だけは知らぬ。此度の戦…奴だけはどう動くか、我は知らぬ」

「それはどういう…」




意味か、そう問う前に毛利は立ち上がり部屋を去ってしまった

奴はまさか…先の世にて、われらの命運を知ったのか?この天下分け目の行く末を?



「そうか…ヒヒッ、」




それは面白い、









「…………」




約束です、


そう言って笑った奴の声が未だに耳から離れようとしない

我の知った結末は奴も当然知っている。恐らくはそれを阻止すべく動くであろう…使命と感じて




「…貴様は、やはり敗北した将の元へ向かうつもりか」



そして命運を…共にする気か、ならば…




「…まずは石田か」



幾度も読み返した“関ヶ原の戦い”と呼ばれる戦。金吾は我の手の内に

他にも寝返る将への手回しは済ませた。何を案ずる、勝ちは見えた、今更奴に何ができる


ただ1つ―…





「長曾我部…元親」





我と奴の名だけは、いくら探しても見つかりはしなかった






20130721.
まさかの史実ネタ

そして、ここに来て何故か急上昇するアニキ





mae tugi

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