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『…………』

「…………」

『ここが…三方ヶ原、なんだよ、ね…!』





三葉葵…

七つ方喰…


それらが描かれた旗が折り重なったそこは全てが終わった後だった





『っ―…元親…家康くん…!小太郎くん、これは…』

「…………(謎)」

『そ、だよね、小太郎くんも分からないか…』



焦げ臭い空気に混じって鉄臭さも漂うここで小太郎くんは私を庇いながら周りを見渡す

ただそこに人影はなく戦の結末は…二人がどうなったかは直ぐには解らなかった




『やっぱり元親は…家康くんを討ちに?』

「…………」

『っ…私は大丈夫だよ、心配しないで』



私を気遣うように顔を覗き込む小太郎くん。こっちに来てしばらく経つけど、実際の戦場に来たのは初めてだったから

でも覚悟はしてたし何より…




『歴史ドラマみたいなもっと酷い場所を想像してたから』

「……?」

『見てられないような酷い…惨劇、を…?』




………あれ?


ハッと顔を上げて周りを見渡す。そうだ、素人目で見ても何かがおかしい

何故ここには誰も居ないのだろうか。壊れた旗や血の痕はある、なのに誰も…亡骸さえないんだ



『何も無さすぎる…ねぇ小太郎くん、戦の後ってこんなに直ぐ片付くものなの?』

「………(フルフルッ)」

『じゃあこれは被害が少ないんだね!もしかして二人は戦ったけど―…あっ!』



殺風景な場所に突然現れた人の影。甲冑を着ている男の人が二人、荷物をこっちに運んでいた

人が…!私は急いで彼らに駆け寄る



『すみませんっ!!』

「ん?て、おいおいアンタ!こんな所に来ちゃ危ないぞ!」

「そうそう、いくら終わったからって…っ、し、忍っ!!」

『へ?』



私の傍らに立つ小太郎くんに気付いた瞬間、一人が驚き身構えた

が、しかし。もう片方の人は彼を見つけて嬉しそうに笑う



「なんだ!北条の風魔小太郎じゃないか!安心しろ、同盟先だ」

「ふ、風魔ってあの伝説かっ!!?」

「ああ!前に家康様に文を届けに来たことがある。じゃあアンタは北条の家の娘さんかい?」

『…あ、えっと、はい!』




また妙な肩書きが増えたけど、今は気にしてる暇なんかない

それより家康様って…彼らは徳川軍だろうか



『あの、家康く…家康さんはいらっしゃいますか?』

「家康様ならもうここには居ないさ。ちょいと騒ぎがあってね」

「急に長曾我部軍が喧嘩を売ってくるとは、なぁ?」

『元親っ!!?』




家康くんが無事なら、まさか…!

顔を青くする私を見て、彼らは何か思いついたらしい。カラカラと笑って言った、心配するなって



「戦にはなっちゃいないさ、お二人は無事だ」

『っ、よ、良かった…わけじゃない!それでも怪我とかしてますよねっ!?』

「ははっ!!男ならそんなもんさっ」

「しかし驚いた、長曾我部が家康様に武器を向けるとは」

「何せ家康様と長曾我部元親は以前からご友人だったからな…東西に分かれた時はヒヤッとしたさ」

「もういいじゃないか。何か誤解があったようだが、それも解けたんだし」

「ああ!長曾我部が東についてくれるなら百人力だ」

『……え?』




長曾我部軍が、東につく?




『ま、待ってください!今の話本当ですかっ!?』

「うぉっ!?ほ、本当も何も、言っただろう?お二人はご友人だからな」

「まさに家康様の仰る絆さ!家康様は長曾我部と、長曾我部は家康様と共に戦う決意をしたんだ」

『た、たかう、て…誰と、ですか…?』

「誰ってそりゃあ…凶王、石田三成に決まってるだろう?」

『っ―……』

「今頃なら大阪に着いててもおかしくないんじゃないか?」

「おいおい気が早いだろ!まぁアンタも安心して待ってろよ。家康様が直ぐにでも平和な天下にしてくれる!」



カラカラと笑いながら再び歩き始めた二人。私はただ彼らの言葉に立ち尽くしていた

家康くんに味方した元親が…大阪に向かった…?



『どう…して…だって、まだ、関ヶ原の戦いは始まってない…!』

「…………」

『何で“大坂の陣”が先に始まるの…!?』




徳川家康が大坂に進軍した。彼らの口振りからして最期の決戦…ならば大坂の陣に間違いない

まさか政宗さんが私を訪ねてきたのも大坂に向かう途中だった?思わぬ展開に取り乱す私に対し、側の小太郎くんも困ったように顔を覗き込んでくる



「………、…」

『大坂の陣なら政宗さんも…っ…真田くんだって出てくる!どうしよう、みんなが戦っちゃう!』

「…………」

『とにかく行こう小太郎くん!三成に会わなきゃ…ううん、元親を止めに行―…!』

「っ!!!?」

『え、きゃあっ!!?』



突然、小太郎くんが体に腕を回し私を抱えあげた!

何と問うよりも早く足が浮いたその瞬間―…



ドンッ!!!

ガッ!!!



『あ―…っ!!』

「………、…」



私が立っていた場所に撃ち込まれたのは小さな鉛。大きな音がした瞬間、土が跳ね飛び煙の臭いが漂う

これは…鉄砲…!




「気づいたか…やはり忍は鼻が利く」

「…………」

『え…』

「…今、元親と言ったな、そして三成と。まずはお前の名を聞こう」



ザッと土を蹴る音がした。そちらを振り向けば一人の綺麗な女性

ただ彼女の手に握られた銃口は真っ直ぐに、私の方へと向けられている




「答えろ、返答がなければお前も奴等の仲間とみなす」

『っ………』

「我らに偽りは通じないと思え、正直に答えれば悪いようにはしないだろう」

「…………」




カチャ、と金属の音


血生臭いここで彼女は妙に映えて見えた





20130724.
ついに姐さん登場ww
カツを入れるのは彼女の役目です





mae tugi

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