太陽の花
※真田幸村伝の幼少設定
※幼児化逆トリ幸村12信之15
『あっれー信之くん。一人でどうしたの、庭に珍しい虫でもいた?』
「ナキ殿…いえ、これを…」
『ん?それ…花の種?』
昼食を終え、みんなが家の中で遊んでいる休日の午後。庭にぽつんと立つ信之くんを見つけた
彼の手には…ヒマワリの種。袋に入ったそれを少し困ったように眺めているが、こんなのうちにあったっけ
「昨日、使いに出た時に出会った嫗(おうな)から礼にもらったのですが…」
『なるほどなるほど、困ってるお婆ちゃんの荷物持ってあげたのかな』
「いえ、階段が登れないようだったので…担ぎました」
『お婆ちゃんごとっ!?さすがだね信之くん。でもヒマワリなんて素敵な花、もらえて良かったね』
「…ひまわりとは、どのような花でしょうか?」
『あ、信之くんの時代にはまだないか。んーっと…ぱあって太陽みたいな花だよ!』
「太陽…」
私の言葉に空を見上げた信之くん。その視線の先には太陽があって、眩しい光が彼の髪に届きキラキラと反射している
元服したてとはいえもう立派な武将さん。男前だなーっと横顔を眺めつつ、よし、と私は手を叩いた
『植えようか信之くん!どうせ殺風景な庭だし、ちびたちも喜ぶよっ』
「はっ…ぜひ。俺もひまわり、を見てみたいです」
『お、信之くんも花好きなの?よし、じゃあ久々に土いじりしますか』
でも花を育てるなんて、小学校の夏休みのアサガオ以来じゃなかろうか
ひまわりなんて一般家庭で育てられるのかな…まあ、植物の生命力を信じてみよう
『花の栽培みたいな乙女的なことと縁遠い人生だしなぁ…信之くんは?』
「俺も、畑弄りはあまり得意では…食う専門なので」
『あ、私も。でも野菜とかの畑は見たことあるよね?』
「もちろん。穴は、弁丸が入る程度掘れば問題ないでしょうか…?」
『何の畑を見たんだ信之くん。いや、埋めずに土を被せるだけでいいと思うよ…!』
「なるほど」
うんうん頷いて納得してくれた彼だけど、ちょっと親御さんの教育方針が気になっちゃうかな
とはいえ、しばらく使われてない庭だ。軽く耕し、肥料を混ぜた方が良いかもしれないね
「ナキ殿、ひまわりが咲くのはいつ頃でしょうか?」
『へ?えーっと…いつだろ。ひまわりは夏ってイメージだけど』
「夏…」
『夏に、太陽に向かって咲くんだよ。皆で真っ直ぐ空を見つめるみたいに』
「む…花に意志が?そうか、お前たちも生きているのだな。しっかりと家を整えてやらねば」
『っ…ぶはっ!!あは、そうだね、ひまわりさんの家だもんね。立派なのつくって綺麗な花、咲かせてもらわなきゃだ』
「はい!そういえば嫗も、家でこの花を育てているとか」
『へぇ、ひまわりを…』
「孫もこれが好きで、今年も美味しく育ったのよ…だそうです」
『美味しく…』
「美味しく」
・・・・・・・。
『…信之くん、もしかしてその種、食用じゃないかな』
「花を食うのですかっ!?」
『ちょっと見せてねー』
今一度、信之くんから袋を受け取り中を確認すれば…芳ばしい香りがふわりと漂う
あー…なるほど…そういうことか。苦笑いする私を前に、状況が分かってない信之くんは首を傾げる。うん、ごめん、私の早とちりだった!
「ナキ殿…まさかこの種は、し、しんで…!」
『へっ!!?いやいや、そういうわけじゃ…ないわけじゃないけど違うくて…!』
「……………」
『あの、そんな、悲しそうな顔っ……でいやあっ!!!』
「むぐっ!!?」
悲しそうな彼の顔に耐えられなくなった私は、信之くんの口に種を1つ押し込んだ!
警戒心の強い彼だけど咄嗟だったのだろう、すぐに噛み潰しもぐもぐと味わう…そして…!
「うまい…!」
ついさっき命を感じたばかりの種さんは、彼の中で美味しいおやつに切り替わった
君が食べる専門で助かったよ…と、キラキラ目を輝かせる彼に袋を返す。あとで弁丸くんと仲良く食べてください
「これは食べ物だったのですね…!」
『みたいだね…調理済みだから花なんて咲かないし、埋める前に気づいてよかった』
「あ…そうか…ひまわりの花は見られない、のか」
『ん?信之くん、そんなにヒマワリの花が見たかったの?』
「…………はい」
さっきまでのキラキラ少年顔はどこへやら。しょんぼりする信之くんに次は私が首を傾げる
…言っちゃアレだけど、お花好きには到底見えない信之くん。いかにも武将の子。何故、ここまでヒマワリにこだわるのか
「…ナキ殿のような花だと、思ったので」
『……え?』
「これは太陽の花だと。そう聞いた瞬間、ナキ殿のような花を咲かすのだと感じて」
『っ……いや、そんな、ひまわりさんは私とは全然違う花だよっ…』
思わず上擦った声で返事を返すけれど、私に視線を向けた信之くんはまたまた不思議そうに首を傾げる
その視線から逃れたくて、私は空へと顔を背けた。真上の太陽。すごくすごく眩しい
「おお…ナキ殿も太陽の方を向いた。やはりひまわりですね」
『がはっ!!ち、違うから!断じて違うから!お願いだからひまわりとか呼ばないで…!』
「しかし実物を見たことがない以上、俺の中でひまわりの花はもはやナキ殿以外には−…」
『君の乙女心に疎いのか鋭いのか分からないとこ苦手だな…!』
その後、ヒマワリの種はちびっこたちと仲良くシェアされたらしい
またおやつで食べたいとねだられたけど…泣く泣くお断りした。もうどんな顔でヒマワリを見たら良いか分からない
20161001.
発売から1ヶ月以上、信之兄上はまだ幼児化しか書いてない…だと…!?
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