真っ赤なウサギさん
※真田幸村伝の幼少設定
※幼児化逆トリ幸村12信之15
小さな君が背伸びをしても、お兄さんはまだまだ大きいみたいだね
「ナキ殿!ただ今帰りました!」
「帰りました」
『お帰り弁丸くん、信之くん。お使いありがとうっ』
荷物を抱えて戻ってきた兄弟は、仕事を終えた満足感でいっぱいな表情だった
真面目でしっかり者な兄の信之くんと、そんなお兄さんを追いかける弟の弁丸くん
彼らは共に戦国時代からやってきた武将の卵、揃って真面目ないい子たち。今日も買い物のお手伝いを自ら名乗り出てくれた
『信之くんはさすが力持ちだね。こんなにたくさん持ってくれて』
「弁丸にはまだ重すぎるので」
「そ、そんなことは決して…!兄上が無理やり僕から袋を奪ったからです!」
「お前がふらふらと倒れそうだったからだ」
「う゛っ…!」
『弁丸くんも負けてない負けてない、ほら!頑張った2人にお礼だよっ』
そう言って私が取り出したのは、子どもたちみんなが大好きなまん丸リンゴさん
お手伝いしてくれた子へのお駄賃だ。真っ先に受け取った弁丸くんはパアッと笑顔に、そして隣のお兄さんを見上げる
「ありがとうございまするっ!!兄上っ!!さっそく佐助にむいてもら−…」
「我らは見返りのために出たのではない。ゆえに駄賃は必要ありません」
「……………」
『……………』
「……………」
「……申し訳ありません」
『おぅふ…!い、いいんだよ弁丸くん、受け取って。食べて。泣かないで』
信之くんのバッサリ切り捨てた言葉に、弁丸くんはしょぼんと落ち込みリンゴを返してくる
いやいやいや、こっちだってタダ働きさせるつもりは無い
昨日お手伝いしてくれた梵は、もっと良い駄賃にしろ!って言って片倉くんに怒られてたし
「されど…我ら兄弟、共に居候の身。タダ飯を食らうわけには…」
『うん、だからお駄賃も飯で払うんだし。信之くんもリンゴ好きでしょ?』
「……………」
「兄上も好きです!」
「弁丸…」
『あっはー、そうだよね。この前は信之くんもパクパクパクパク食べてたもんねー』
「……………」
『…信之くんも、リンゴ好き?』
「………好きです」
『だよねー知ってる!』
じゃあ遠慮なく食べちゃって。そう伝えると信之くんは斜め下に視線を向け、うーんと悩む素振りを見せる
けどすぐに、しっかりと頷いてくれた
『よし、じゃあ私が切ってあげるね!二人は手を洗っておいで』
「はい!ナキ殿、僕はウサギのリンゴがいいです!」
「弁丸、無茶を言うんじゃない。ナキ殿がウサギを切り出せるわけがないだろう」
『がっは…!信之くんの的確に相手を抉ってくる口撃は見事だと思うよ…弁丸くんは真似しないでね』
「ふふっ」
『お?』
クスッと小さく笑った信之くん。すぐにいつものキリッとした顔に戻ったけれど、さっきは年相応の少年に見えた
元服も済んだ立派な“武将”の彼だけど、ここにいる時は少しくらい…いや、私が決めることじゃないか
『あは、よーし!じゃあ弁丸くんと信之くんのために、頑張ってウサギ切ってみようかな!』
「は、はい!兄上!ウサギです、ウサギっ」
「ああ…だが、いいか弁丸。例えウサギに見えなくとも味に違いはない。どんな形でも文句は言うなよ」
「も、もちろんですっ!!」
『わー、フォローになってないよ信之くん』
…でも期待に添えられるよう頑張ってみるね
なんだかんだウサギを楽しみにしてるようで、信之くんの耳…みたいな髪もふさふさ揺れていた
20160828.
信之兄上が想像以上に真面目堅物っぽくてツボを付かれました…!
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