臭い物には蓋をする


※大人夢主と高校生夢主が混在しています




『……ぐっは』

「どうしたんだよナキさん、内臓か何か潰れた?」

『かろうじて保ってるよ思春期忍者…いや、また同窓会の誘いがきてさ』

「また?この前行ったばっかりじゃん」

『同窓会という名の合コンだろうね…私が織田貿易の社員って解ったから餌だよ、餌』

「うわ、やだね女って…」

『ねー、誰も私のことなんか覚えてないくせに』




同窓会の案内をぐしゃぐしゃに握り潰しながらそう呟くと、居間で一緒にお茶してた佐助くん、そして家計簿を睨んでた小十郎くんがパッと顔を上げた

なんだい何か文句あるのかい




「たかが数年前だろ?ナキみたいな強烈な女、誰が忘れんだ?」

『強烈の意味を具体的に聞きたいぞ堅物男子。いやいや、昔の私は根暗な引きこもりだったからね』

「俺の知ってる根暗と違う…ナキさんのことだから、ひねくれた子だったんだろうね」

『ひねくれは間違いないけど…正直あんまり覚えてない。記憶の奥底に沈めた黒歴史だからさ』




雑賀さんと風魔くん、二人の親友の姿は目を閉じれば浮かんでくる

ただそれ以外の風景にはもやがかかり、私の頭は黒歴史を思い出すことを拒んでいた




『うーん、思い出せないうら若き乙女時代』

「ぶはっ!!誰がうら若き乙女だ、笑わせんな」

『なんだと堅物男子っ!!君が今、ピチピチの十代であるのと同じように私だって…!』

「ナキどのーお客さまでござるーっ!!お通しいたすっ!!」

『え、なになに弁丸くん?また変態部長でも来て…』

『お邪魔します』

『………………』

『………………』

『………………』

『………………』

「…ナキさんにそっくりな人だね」

「ああ、そうだな」

『はじめまして、小石ナキと申します』





・・・・・・・。





「小石ナキ…お前の名前と似てんな」

『そっくりそのまま同じだよバカヤロー』
















『気が付いたらこの家にいたんです、不法侵入ではありません。そしてまるでくすんだ鏡を見ている気分』

『うん、それは私が君よりババアって意味かな?わざわざ煽る言い方するね君、そしてそれより本当に小石ナキなの?』

『正真正銘、間違いなく小石ナキです。よろしくお願いします小石ナキさん』

『おぅふ…!』




制服姿で目の前に座る女の子は、気づいたら我が家にいたらしい

時代を越えたとは思えない現代的な格好。そして何より小石ナキという名前だ。騒ぎを聞きつけたちびたちが私と彼女を戸惑いながら見比べているように…そう、似てるんだ


名前だけじゃなくその容姿も、まるで私の高校時代を見ているように




「ま、まさかだが…本当に昔のナキじゃないだろうな?」

『いやいやまさか…私はこっちだし、同じ人間が揃うとかありえないでしょ』

「確かに…性格はナキ以上に冷めておる、性根はよくなかろ」

『い、いや刑部さん、それ言われると自信なくなる。性格は確かにあの頃の…私に、に、似てる気が…』

『似ている…でしたら貴女も、初恋のお兄さんに宛てた手紙など嗜んでいたのですか?』





・・・・・・・。





『ぎぃやぁあぁあぁあっ!!!!!』

「うぉおっ!!?」

「ど、どうしたのナキさんっ!?」

『思い出せないお兄さんを希望にし、募らせた思いを文字にしたためたあの日を…』

『黙れ黒歴史っ!!!』

『いひゃいれす』




次の瞬間、記憶を揺さぶるその口を閉じろ!と、彼女のほっぺをムギュッて押し込む

唇を尖らせるかたちになりながらもムグムグ何かを吐き続けている。そんな彼女を壁まで追い込んだ。解ったから、お願い、黙って…!




『おや、これが巷で話題の壁ドンですか。しかし先日、興味本位な雑賀さんにされて腰砕けになった時に比べたらまだまだです』

『雑賀さんの名前まで…!まさか、本当に高校時代の私なのかっ』

『ならば貴女は未来の私ですか…子沢山とは誰が予想したでしょう』




そんなことを無表情に呟いた彼女の視線の先は足元へ。私たちの周りに集まるのは弁丸くん、竹千代くん、それに梵

そして遠くからだけどこっちを見つめる佐吉くんは、私たちが喧嘩してるように見えるらしい




「け、ケンカはダメだぞナキっ!!」

「ダメでござるーっ!!」

『安心してください未来の我が子たち、こう見えて私は喧嘩を売れないビビリです』

「いつも喧嘩腰なナキさんが言っても説得力ないんだけど…」

『しかし私が結婚できたのも予想外。いったい私なんかを誰が引き取って…』

「………………」

『………………』

「………………」

『…まさかの年下ですか』

「おい、なんだその顔はっ!!文句あんのかっ!!?」




子どもたちを見比べた彼女は次に部屋の真ん中にいる堅物男子…小十郎くんへ視線を向ける

そしてここで初めて表情を崩した。至極残念そうに




『私は優しくて爽やかな年上の男性が好みだと思っていたのですが…こうも正反対な旦那とは』

「悪かったな正反対で…!」

『あはー、拗ねるな堅物男子。子どもの言うことなんだから聞き流し…』

『そうですね…私はきっと、そっちのお兄さんが好みだと思います』

「え、俺かい?」

『ぎゃあぁあぁあぁあっ!!!?』

『ぶえっ』




宗兵衛くんを指差してとんでもないことを言う彼女を再び追い詰めて壁ドンっ!!

な、なに言って…!




『べ、べべ別にマセガキが好みとかじゃないしっ!!ぜんぜん違うしっ!!若い毛根禿げ散らかせっ!!』

『おやおや未来の私は存外ウブですね』

『我ながらその顔腹立つ…!』

「ナキさんが押されてる…」

「ちびナキの口達者…確かに思い出したくもない黒歴史よなぁヒヒヒッ」

『楽しそうに笑うな刑部さんっ!!』

『ああ、そこの不思議な目のお兄さんも嫌いじゃないと思いますよ、私』

「ヒッ…そ、そうか」

『そして照れるなっ!!』





20150313.
過去ナキトリップ

続く予定かもしれない


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