いばら姫のトゲを抜く


「………っ、…」

『ん?どうしたの松寿くん、大きな欠伸だね眠い?』

「……ああ」

『なになに刑部さんのイビキがでかくて寝られないとか?』

「われに喧嘩を売っておるのか、ナキ」

『冗談ですよ。最近、夜更かししてるからね。そのくせ朝が早いから』

「我の目覚めは日輪と共にある」

『あはー、光合成』



そのわりに、エネルギーが作られてない気がするぞ







『……ん?珍しいね文系少年。君が庭に出てるなんて』

「それを探しておる」

『おぉう…』



ちびっこが昼寝をしている時間。庭をチョロチョロしている松寿くんを見つけた

何をしているのかと思えば…縁側に広げられた昆虫図鑑。まさか虫を探してるのかい



『意外だ…君は虫とか気持ち悪くて触れないタイプだと思ったのに』

「我が恐れるものなどないわ」

『そうかいそうかい、けど残念ながらカブトムシさんは我が家の庭にはいないかな』

「………そうか」



あ、めちゃめちゃ残念そうな顔になった。カブトムシが売られるようになったら買ってあげようかな、ちびっこも喜ぶだろう



『ほら、こっちおいで。手を拭こっか』

「…………」



土だらけになった松寿くんの手をタオルで拭いてやる

ゴシゴシとされるがままな彼。こう見えて甘えたさんなところも可愛いな



『松寿くん、勉強熱心な上にアクティブだねー。優等生、優等生』

「…ふん、」

『好奇心が強いのはいいことだよ。松寿くんは賢いから何でも吸収しちゃうし』

「当然よ、我が知り得ぬことなど…直になくなる」

『そっかそっか』



ちびっこが走り回る音も声もない中、のんびり縁側でだべる私たち。ちょっと日差しは強くなりだしたけど過ごしやすいこの頃

そして何をかくそう、この子は日輪の申し子だから―…





『…松寿くん、眠い?』

「ん……眠くはない」

『嘘だー、いつもより数段口数が少ないもん。寝不足な上に庭でチョロチョロしたから疲れたでしょ?』

「…………」

『ほら、ちびっこたちと寝てきなよ。みんな寝相悪いから弥三郎くんの隣が穴場だよ』

「…行かぬ…我を寝かせたいならば、ナキも共に来い」

『おぉう、』



あらやだ可愛いこと言ってくれるなこの子。だがしかし、私はちっとも眠くはない

それに今寝たら夕方まで起きないだろう、しかし今にも寝そうな彼は私の服を掴んで放さない、うーん…




『あ、じゃあ膝かしてあげるよ』

「…………は?」

『あはー、膝枕?うぇるかむおいで』



ブラブラと揺らしていた足を上げて組んだあと、膝を叩いてみせた

さぁ、頭を乗せなさい。これにはさすがの松寿くんも戸惑ったようだ。むっと顔をしかめて首を横に振る



「…遠慮する」

『まぁまぁ。たまにはいいでしょ、あ、上からの視線が気になる?』

「…………」

『じゃあ顔を隠してもいいからさ、ね?』

「…………」



私の膝と顔を見比べて悩む松寿くん…だけど、そろりとこちらへ近寄ってきた

そうそう。甘えられる時に甘えとけばいいよ




『肉付きには自信あり』

「…女としてそれはどうなのだ」

『あはー、膝枕にはいいと思うよ?ほら、どうかな少年』

「っ―…」



ゆっくりと横になった松寿くんの頭を膝の上へ

らしくない緊張をしているらしい彼は、位置が定まらないのか首をグリグリと動かす




『ちょっとくすぐったいぞ。やっぱり眠れないかな?』

「いや…」

『んー?』

「…………」



いつものことだ。松寿くんは頭を撫でると、とても安心した顔を見せてくれる

段々と重くなっていく瞼。夢に落ちていくのが自分で分かるのか、彼はぐるりと体を傾けお腹に顔を埋める




『あは…おやすみ松寿くん、いい夢見てね』

「…、……」

『ん?何て?』

「……なら……ぃ…」

『…………』




これならば、夢見はよい


君はあまり、いい夢を見れてなかったんだね




『…ゆっくり休むといいよ。ずっと居てあげるから』





すーっと小さな寝息が聞こえる

顔にかかった髪を耳に掛ければ、見えた寝顔に私も安心した


なんだ、穏やかに眠れるじゃない







20130614.
元就さまを記憶に残し隊

松寿くんに静かな眠りを^^


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