小さな子供には優しいのです


『…てわけで、今日は休みますね浅井先輩』

「いきなりかっ!!?貴様、昨日の今日で職務放棄とは…!」

『あ、だったら後で仕事取りに行きますね。家で仕上げます』

「いや、そういう問題では…って、部長、何をっ!!?」

「ナキさん!よろしければ私が持っていきましょうか、そしてついでにお子さんに挨拶を―…」



プツッ



『…よし、仕事休んだから大丈夫だよ』

「ぜんっぜん大丈夫に聞こえなかったんだけど!!?」

『気にするな子守り忍者。それより、あの二人はどう?』

「見ての通りだよっ」






「………」

「………」

「な、なんだよお前ら!こっち来るなっ」

「弁丸も竹千代も驚かしちゃだめだよ、ね?あっ…」

「く、来るな!あっち行け!」





『……あはー、仲良しさん?』

「どこがっ!!?」



弥三郎くんに隠れる梵天丸くん。そんな彼を追いかける弁丸くんと竹千代くんは…うん、きっと友達になりたいだけだよね

ちょろちょろと走り回る子供たちの可愛さといったら。和む。やっぱり子供は好きだ



『…それに比べて。聞き分けのない男はモテないよ片倉くん』

「余計なお世話だ…!」

『あんまり殺気立ってると傷口突くよ』

「!?!?!?」

「大人に容赦ないなアンタっ!!」

「ヒヒッ黙れ猿、ナキは出会った頃からコレよ」



女の私に脅されるのが不服なのか、ぐっと顔をしかめる片倉くん

刀は宗兵衛くんに奪われたままだし人数的にも圧倒的に不利。反撃は諦めてるようだけれど



『ん…とりあえず説明ね。ここは平成って言って、君らのいる時代の400年先なんだよね』

「400―…!?バカを言うなっ!!そんなことがあってたまるか!」

『…ですって刑部さん』

「片倉、冷静に周りを見ればぬしも解るであろ。外へ出れば一目瞭然だがなぁ」

「だがっ―…解っているなら、早く帰せ」

『帰す方法が解ってるなら苦労しないって。私が解るのみんな有名な戦国武将ってことだけだし』



とは言っても、日本史なんて気合い入れて勉強してなかったから

むしろ世界史が好きだ。これでも貿易会社の端くれです



『とにかく、外は危険。社会も危険。だから大人しく匿われてね』

「テメェが安全だとは決まってねぇだろ!」

『ごもっとも。私が敵か味方か分からない以上、片倉くんが冷静でいてあげて』

「っ―…」

『君以上に、小さい梵天丸くんは不安なんだから』

「こじゅうろぉぉぉっ!!!」



二人に追い回されていた梵天丸くんが、片倉くんのもとへ逃げてきた

彼の周りをぐるぐる回る子供たち。弁丸くんと竹千代くんはずいぶん梵天丸くんを気に入ったんだね



「それがし、弁丸でござる!」

「ワシは竹千代だ!よろしくな、ぼんてんまるっ」

「〜〜っ!!!」

「梵天丸様!怯えていてはなめられるだけでございます!堂々となさってくださいっ」

「う゛っ…」

『おー…厳しいな君は。他所の教育方針に口出しはしないけどさ』

「っ、テメェ!」



逃げ回る梵天丸くんを捕まえて、無理矢理膝の上に乗せた

思わず立ち上がろうとする片倉くんを宗兵衛くんが押さえ、私の側に子供たちも寄ってくる



『梵天丸くん…長いな、梵でいいや、梵』

「略すな!放せよお前っ!!」

『お前、じゃなくてナキだよ。さっきは怖がらせてごめんね』

「怖くなんかねぇぞっ!!?」

『うんうん、そりゃよかった。私なんかにビビってちゃこの時代で生きてけないよ』

「っ―…」

『でも大丈夫、ここに居る間は私が君もみんなも守ってあげるから』

「え…」

「それがしもだっこを!」

「ワシもーっ!!」

『あははー、君らも乗ると私が潰れちゃうよ』

「弁丸様!竹千代!ほんとに小石さん潰れちゃうから!」



ぎゅうぎゅうと抱きついてくる子供たち。さすがに二人は重いぞ

それでもキャッキャと笑うこの子達に悪い気はしない。梵もそうだよね?



『私がお母さんでお姉ちゃんだよ。あ、できれば姉上でお願いね』

「………」

『どうした、梵?』

「っ―…な、なんでもないから離れろ!」

『あはー、離れてあげたいけど、重…い…ぐはっ』

「ちょ、小石さんっ!!!?」

「お姉ちゃんっ!!!?」

「いい加減に放れぬか貴様ら」




松寿くんが二人を蹴飛ばしてくれたおかげで、なんとか呼吸ができたよ危なかった

しかしまぁ…新しい家族は大歓迎。例え聞き分けの悪い大人と生意気盛りな子供だとしても



『けど…弱ったな』





………部屋が足りないぞ




20130212.
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