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「評判通りだな」
と金城に言われたのは私が1週間の仮入部を経て正式に自転車競技部マネージャーになり、ちょうど1か月たったころだった。
部活はとっくに終わっているのだが、金城が少し自主練をしたいと言っていたので自らの勉強のためにも今日は居残っていた。


「評判?」


なんの評判だ、あいにく優等生ではないのできっと悪い噂なのだろう。せっかく仕事にも慣れてきたと思っていたのだが、まだまだだったか。
若干へこみながら、金城の返事を待った。


「深谷は気が利く。マネージャーになってくれてよかったと思っている」


私が想像した答えとは真逆の言葉に、一瞬何を言われたかわからなかった。


「…お世辞?」


「本音だ」


金城が嘘をつくようには思えなかったので、きっと本音なのだろう。
しかし、どこからそんな評判が出たのだろうか。私はあまり友達が多い方ではないので話題に上ることもないだろうに。
なにか金城に誤解されている気がする。


「気が利いてたらもっとうまく仕事できてたと思うよ」


「十分だ」


「失敗ばかりだもん、私」


「許容範囲だ。それに同じ間違いは2度していないだろう?」


「そりゃあね。でもやっぱり金城くん達には迷惑かけてばっかりだよ」


「いや、助かっている」


そんなことない、とまた否定しようと思ったが金城の練習の邪魔になると思い口をつぐんだ。
金城がペダルをこぎ、ローラーを回す音だけがあたりに響く。彼のフォームはとてもきれいだ。


しばらく金城の練習に見入ってしまった。
そのせいで金城が練習を終えてすぐにタオルを渡すことができなかった。なのに彼は、やはり気が利く、と言い頭をなでてくれた。


「金城くん、モテるでしょ?」


「さあな、気にしたことはない」


彼が着替えている間に用具を片付ける。
タイミングよく、片付け終わったころに彼も帰る準備ができたようだ。


「もう遅いから送っていく」


自転車で帰った方が早いだろうし練習にもなるだろうに、彼の方が気が利くと思う。
やっぱりモテるんだろうな。
今度から少し女子の会話に注意しよう。自分のためにも、部のためにも。






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