2
全国をすでに見据えるようなほど、うちの自転車競技部は強い。
そりゃあ自分の学校の部活の良い成績なら知ってて当然と思うかもしれないが、私がそれを知ったのはちょうど1年位前だった。
懐かしいな、と思いながら自転車競技部の放課後練習を夕日の差し込む教室から眺めていたら先生に声をかけられた。また部活に入らないか、と誘われた。アルバイトをするでもなくただ帰宅部だった私はとりあえず見学に行くことにした。
たしか誘ってくれた先生は書道部の先生だったから、連れていかれた先がまさか自転車競技部だとは思わなかった。
「お、深谷」
「やー、まっきー。そういやチャリ部だっけ」
「チャリ部いうなっショ、それからまっきーも」
「まーまー、いいじゃない」
「そんなことより、なんか用か?金城?田所っち?」
「まっきーも含めて全員かな。なんか書道部の先生に部活に入らないかって言われて…で、ガイジンの先生にここまで連れてこられた」
「あー、監督っショ、それ。うちの」
「へ〜、あの英語の先生自転車競技部の先生だったんだ」
平然と話しているが、まっきーこと巻島裕介は部室の前で自転車をローラーの上で乗りこなしている。
しばらく見守っているとノルマが終わったのか自転車から降りた。
「で、うちに入るって?マネージャーってことっショ?」
「うん、そうなるね。自転車競技部が何してるか全然知らないけど」
「ふつー知らないんだったら入りたいなんて思わないっショ…」
「まあね。でも部員足りなくて大変って言ってたから…」
「雑用か」
「そうなるね」
部室に戻るらしい巻島についていく。部室に入ってもよいと言われたので入る。
2年のほか二人は用事があり遅れるらしい。1年は外回りを走っているらしい。
そういえば今日、私たち2年は学年集会が長引いたんだった。きっと金城と田所はその影響だろう。巻島がいまこうしてアップのような行為をしていたのもそのためか。
「自主練とは感心」
「感心されても、なぁ?あたりまえっショ」
「大人になったねーまっきー」
まっきー言うな、とデコピンを食らった。
1年前のあの日以来、私たちは友達になった。2年になったら違うクラスになってしまったが、それでもたまに会うと話をするくらいには仲が良かった。
あの頃は自主練を恥ずかしがっていた巻島もついに大人になったのだな、とほほえましくなった。
もうすぐ年が明ける。春になったら1年生が入部する。夏にはインターハイで秋には引退する。すごく短い期間だな、と思った。なんでこんな時期にマネージャーが必要なのかとも思った。だけど、やりたい、と最終的には思った。1年前から少し気になっていたからかもしれないし、先生が私に頼みたいと言ってくれたからかもしれない。
どちらにせよ、答えは仮入部の後でもいいかな、と思った。
- 3 -
[*前] | [次#]
[戻る]