子ども?

辺りは静まり返る。そんなことは気にしてられない。俺は振り返って子どもを見た。

「怪我してんじゃねぇか!」

「え…?」

その子の前に屈んで肩を掴んだ。

「…痛かっただろ?…なんで、こんなに。よく泣かないでいたな…偉いぞ。」

俺は頭を撫でた。

「えっと…僕は、別に…」

「さ、審神者さま…!何をしてらっしゃるのですか!」

こんのすけは俺の頭の上で必死にしがみついていた。

「おい、こんのすけ。この子の保護者呼んでこい。こんなところに子どもを置いてくなんて許さねぇ。」

俺は久々にこんな気持ちになったんだ。俺の脳内が平和すぎたか。



「こりゃ驚いた…」

「カッカッカ!お主も修行をしたのだな!」

なぜか他の奴らは盛り上がってた。

こいつらも傷だらけだ。痛そうに。



「大変申し上げにくいのですが…これが、この刀剣男士の役目でございます。」

「…は?」

言ってる意味がわからないんだが。



「つまり君たちの本来は刀ってことでいいのか?」

「そうです!車の中でも説明いたしましたぞ!」

こんのすけからまた長ったらしい説明を受けた。わかったことはこいつらが刀で、審神者がこいつらを育てるってことくらいだ。

「騙したな、佐々木さん。」

審神者の仕事なんて俺には無理だろ!見た目が子どもだとあんなことさせられねぇ。大人でも無理。

俺、守る側なのに。保育士の本能とやらが働いてしまうな。

「主から強制帰還の指示が出た。今から戻るぞ。」

いろいろな言葉が飛び交うがみんなはしぶしぶ俺に背を向けた。

「わたくしたちも行きますよ!」

「…あぁ。」

ますます気が乗らなくなってきたな。



「ねぇ。」

「どうした?」

さっきの子が俺の方へと駆け寄ってきた。

「僕は小夜左文字。あなたは?」

「審神者さま!真名は教えてはいけませぬぞ!」

小声で伝えてくれた。なんだ真名って。

「…俺は玲吾だよ。」

「これあげる。」



「え?緑の紐と…柿?」

小さな手から二つのものを受け取った。

「うん。他の僕は赤の紐で髪を結んでいるから…僕は緑にすれば僕が見つけやすいでしょ…?」

「…うん?」

「また、玲吾に会いたい。」

そう言って走って行った。

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