本丸!

「…かわいいな。」

小夜左文字という子は俺の心を鷲掴みにした。柿は後で食べるとして…この緑の紐は。

「こんのすけ。俺の手首に結んでくれないか?」

「わかりました!」

前足と口を使って綺麗に結んでくれた。

「ありがとう。」

「さぁ、早く行かなければ!みなさまが待っておられますぞ!」

「っと…あまり急ぐなよ。」



俺は体験程度で審神者の仕事をするから元あるところに行くんだと。本丸…?だったっけ。その本丸にも白やら黒やらあるらしいが俺にはさっぱり理解不能。

まぁ、ちゃちゃっと終わらせて保育士の仕事をしよう。あいつとあいつは、またケンカしてんのかなぁ。早く子どもたちとお昼寝したい。

「審神者さま!ここでございます!」

「おお。ここか…」

でかいな。しかも古風。どこの城だよ。予想していたのと全然違った。

「早速、中へご案内いたしま…」
「あんた誰。」

玄関から誰かが少し警戒気味に顔を出していた。

「君こそ誰?」

「……。」

全然口を開かないんだが。俺なんか変なこと言ったかな。

「審神者さま…」

「…仕方ない。」

こんのすけを腕に抱く。

「俺は玲吾。そして君の名前は?」

この子が玄関に居て通れないんだよな。

「教えない。」

「え。」

これは初めてのパターンだ。

「こ、この方は…」

「いや、こんのすけは言わなくていい。」

その子の方へと歩み寄る。

「なに。」



「君は自分の名前を名乗ることを教わらなかったのか?」

青っぽい羽織の袴姿の子の目を見た。どっかで見たことがある羽織だな。

「…僕に説教するの?」

鋭い目つきだった。

「説教ではない。どちらかと言うと質問だ。…ただ人間の常識を教えたいんだよ、俺は。」

人の身を貰った以上そいつは人間とみなされるんじゃないか?

「何様のつもり?」

なんだこの子は。

「別に俺は普通の人間。体験でここに来た審神者ってやつ。」

「あんたが、ここの主になる人…?」

「まぁ、少しの時間だけどな。」



「…大和守安定。」

ボソッとだったが聞こえなかったわけじゃない。

「…!」

本当に嬉しかった。

「よろしくな。」

この子は多分いいやつ。

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