目が覚めて一番にすることは、時計を見ること。自分がどれほど寝たのか確認するために。
「もうお昼かー」
少し寝過ぎたかな、と思いながら、自室を出てリビングに向かった。
「おはよう」
リビングに入るとまず、父が目に入り、声をかけた。
「…なぁ。お前、天使に会ったことあるか」
私の朝の挨拶は華麗にスルー。真剣な眼差しで、顎の下にはしっかりと太い指を組んでいた。然ながら大企業の重役かのような仕草で。
「あー…」
嘆きとも呟きともわからない声を出してから、とりあえず父の向かいの椅子に座った。
「あるある」
肩をすかし、どってことない風にそう言うと父は食い気味に
「まじか!」
と興奮した。
あまりの興奮度に若干引きつつも、それがどうした、と話を促した。
「いやー、お前が寝てる間に、玄関鳴ったからインターホン出て見ると女の子が『天使です』っていうからさー」
「ちょっと、それで何て言ったの?」
「俺会ったことないから天使かどうか確認の仕様がないから『ちょっと待ってください』って言っといた。お前確認して」
ちょっとってどれくらい待たせたんだよ。まー、どうせ宗教の勧誘だろうからもういないだろうな。
そう思い、インターホンの画面を覗くとそこには女の子が一人立っていた。
「ちょっ、お父さんっ!チャイム鳴ったのいつよ!」
「んー…。1時間くらい前かな」
馬鹿っ!
「アマネ!ごめん!直ぐ出る」
天音 使音(あまね しおん)
通称、天使。
歴とした私の友人である。
「大丈夫、今来たとこだからー」
それは無理がありすぎるだろ!
…本当に天使のような子なんです。