僕は君の涙も、悲しみも、どうしてやることもできないんだ。
ただ、見ていることしかできない。
「…私は、正論が聞きたかったわけじゃないのに」
涙を流しながら言う君が、悔しくも美しいなんて。残酷だ。
「正論って?」
できるだけ優しく言ったつもりだが、きっと顔は引きつっている。
「浮気はしてはいけません。不倫は犯罪です。…二番目は、幸せになれない」
彼女を突き刺さした言葉が、今度は僕を突き刺す。
「…幸せになれないことが、いけないことだって一体誰が決めたんだろ」
誰に向かって言った言葉か、もうわからない。
「さぁ、神じゃないの。…魔法が使えたら、こんな世界破壊してやるのに」
そう言った君はどうして僕を見ない?
「僕に魔法が使えたら、操るね」
「なにを?」
「…世界を?」
本当は君を操りたいんだ。思い通りにしたいんだ。想いが伝わり、返してくれるように。
「世界を変えたって、人間が変わらなきゃ意味ないのに」
せめて、僕は。
「でも、世界が変われば、もしかしたら君は幸せになれるかもしれない」
君の幸せを願いたい。