「ごめん」
何度言われたかわからない。
どの“ごめん”も意味が一緒なのかさえも。
「…ごめん」
「もう、わかったから」
本当は何もわかっていないのに、この口はいけしゃあしゃあと嘘をつく。それでも、罪悪感は不思議とない。
「…ごめん」
ねぇ、その“ごめん”は、何に対して?
「俺、本当にお前だけなんだ」
だから、なに?
「別れるなんて、言わないでくれよ」
どうして貴方が辛そうな表情をしているの?悲劇を背負ったみたいに。
「なぁ…。本当に俺にはお前しかいない」
その、伸ばした両腕はなに?
その手で誰を抱きしめるの?
「…頼むよ」
少しずつ壊れていく心が、涙も見せずに音を立てて壊れていく。
「ごめんな。俺にはお前しか」
やめて
「お前しかいないんだ」
縋らないで
「頼むよ、公子」
そんな優しい声で呼ばないで
「ごめん」
謝らないで
「…好きだ」
その一言でよかったの。
「…私も」