狂愛



「もう好きじゃないよ」

冷たく言い放つ目の前の男を殺してやりたい。

「サイテー」

こんな最低野郎に親友が心奪われたなんて。現実はなんて惨いんだ。こんな世の中クソだ。

「最低なのはお互い様だろ? でも」

不適に笑みを浮かべると、男は私の右腕を掴んだ。

「この白くて細い腕で殺されるなら、俺は本望だけどね」

本当に殺してやりたい。


「うそつき」

呪いがましく言ってやろうと思ったのに、どこか甘さを含んだ自分の声に反吐が出る。

「ああ、なんて可愛いの」

そう言って男は手を右腕から右頬へと移した。

「キミになら殺されてもいいのに」

そんなこと一欠片も思ってないくせに。思ってないことを言う天才だ。なんて傲慢で嫌らしい男なんだ。

「…殺す価値もない最低野郎のくせに」
「そんな男が好きなくせに」

クスクスと笑いながら、くすぐったく右頬を撫でる。そして、驚くほど甘い声で嘘の愛を囁き、蕩けるような体温で優しくキスをする。

「親友をも殺すキミはなんて可愛いくて醜いんだ」


右頬がくすぐったく揺れた。


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