こんなチャンス、二度とない




「あ、坂下」

甘く、身体の中をゆっくりかけめぐる。

「篠崎くん?あれ?」

こんな所で会うはず無いのに。突然の出来事に頭がついてこない。




「坂下って家この辺なん?」

そんな私にお構いなしに篠崎くんはいつも通り話を続けた。

「あ、うん。すぐそこ」

混乱したまま、ただただ聞かれた事に答えようと、自分の家の方角を指差した。
ふと、袖が視線に入った。


――しまった!‥部屋着だ。


「あー、だからここのコンビニなんだ」

偶然にもこんな地元のコンビニ前で、篠崎くんに会うなんて。わかっていたら。
すくなくともこんな部屋着でなんて出なかったのに。普段から自分の女子力の無さに泣きそうになった。



「‥うん」

「何買ったん?」

篠崎くんは、気にならないのか話を続けていた。

「食パン買ってきてって言われて‥」

「ああ、おつかい?こんな遅くに一人じゃ危ねぇよ?」

こんな格好で危ないも何もないよ!なんて優しい。

「そんな、大丈夫だよー」

「いやいや、最近ホント危ねぇから。あ、送るよ」

オクルヨ‥?
‥送るよ!?

「そ、そんな、ホント大丈夫だよ?!」

暗いとはいえ、こんな格好であの篠崎くんの隣を歩くなんて‥。そう思うと、必死に断っていた。
言い終えてから、せっかくのチャンスなのに、と後悔した。

「遠慮すんなってー。こっちに行くついでに、坂下さえ良ければ」












星屑レディ様提出
《遭遇》
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