博愛主義者





「‥すきなんだ」


そう言った瞬間、彼女は顔をしかめた。



――嘘だろ。
愛の告白さえもう受けとってくれないなんて。



昔、誰かが『“愛”は心をド真ん中に受けとめることだ』とほざいていたが、まさにその通りだ、と手をあげて降伏のポーズを付けて賛同する。



受け入れてくれないなんて、愛と呼べない。こっちにどれほど愛があったって意味をもたない。これが現実だ。悲しいことに。





「それ、本気なわけ?」

眉に力が入っていることが、眉間の皺からうかがえる。



本気かなんて、ヒドイ女。


「うそなわけ、ないだろ」

もう泣きたい感情は通り越したのかもしれない。

「どうだか」

――うそだ。
今すぐにでも涙を流せる。

「誰にでも言ってるんでしょ」

ため息と共に吐き出された本音だ。

「‥誰にでもって?」

もう、なんなんだ。




「B組のゆきちゃん。昨日アンタと安いけどそれなりに可愛いホテル行ったって言ってたし、その前はC組のあの美人なあかりちゃんと手組んで歩いてたらしいじゃん。‥浮気なんてしないって言ってたくせに。‥やっすいセリフなんて吐くな!アンタに愛を語る口はない」


思わず彼女の腕を掴んだ。





「‥すきなんだ」



悲痛に歪む彼女の顔を、もうどうすることもできない。




「うそつき」



そう言って掴んでいた手を振り払って、一度も振り返らずに俺の前から姿を消した。
もう、後を追うエネルギーは残っていない。



――いや、それだけの覚悟、か。





主義者
縋る手に、吐き気のする
甘ったるい科白。キミに
愛など語られてはお終いだ




ゆびさき に きす様提出
《浮気性・遊び人》

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