confidence 4ヶ月半
2017/07/12 21:21
外見はシンメトリーな二人
内面はとてもアシンメトリーだ。
「おーい、二人とも」
「ガイ?」
「ん…?」
呼ぶと向こうを向いていた二人が同時に振り返る。互いに内側から振り返り頭の動きや体の捻り方など完璧な鏡になった二人に最初は驚いたが、双子ならそういうものかとなんとなく納得したのである。
「最近暑くなってきただろ?涼むのと観光にグランコクマに行きたくないか?」
「ぐらんこくま?」
「帝都か…」
「あたらしいとこ、行きたい。だめか?アッシュ」
「だめだ」
「う……」
即答したアッシュに不満げに唸るルークは頭にチョップをくらい涙目でこちらに駆けてくる。俺はルークを慰めながらもそっと問いかけた。
「んー…ルークはグランコクマ行きたいか?」
「うっ…、ぐす。行きたい。行きたいけど、アッシュがグランコクマはだめだっていうから行かなくていい」
「おいおい…アッシュが言ったからってルークまで我慢しなくてもいいんだぞ?」
「ちがう、アッシュが言うことがただしいからおれはアッシュがいったようにすればいいんだよ」
「ルーク…」
やっと解ってきたことは、ルークの主張がアッシュを基準にされていると言うこと。いくらルークが弟でも考えまで兄優先と言うのはおかしいと思う。自分には姉しかいないから男兄弟の時は話は別なのかもしれないが、姉が言うから我儘を言うのをやめるなんて子供の頃は出来なかった。双子はまた違うのだろうか。でもアッシュが強制させているわけでもないしルークが自らそう言うのだから止めさせようにも難しい。
「アッシュはなんでグランコクマに行きたく無いんだ?」
「……行きたくないとかそういう問題じゃない。こいつに旅行なんぞむりだ」
「行ってみないとわからないだろ?」
「わかる。こいつは駄目だ。…はしゃぐだけはしゃいでわがままばかり言ってろくなことはしない」
「それは俺が責任持って面倒見るから、な?いちよう伯爵だし、弁償するとかいう自体になっても大丈夫だから」
アッシュの意見を変えようと声をかけるとルークを睨みながら理由を喋った。しっかりしたお兄ちゃんだなぁと感心していると、向こうから投げ掛けられた。
「…なぜそこまでする?」
「拾ったんだし面倒はちゃんと見るに決まってるだろう?」
「身元も知れない、なんのりえきにもならない子どもの?…お前はばかか?」
「そんな、物じゃないんだから利益もなんもないだろ。お前逹を生かして、楽しませてやりたいから面倒見てるんだ」
寄り添っていたルークがするりと腕から逃れて、アッシュの元へ行き腕を絡ませた。アッシュは不可解そうな顔をして、ルークはちらちらとアッシュを見ながら絡んだ腕に頬を擦り寄せて不安げにこちらを見上げた。ついさっき泣かされたばかりだと言うのにアッシュの元へ戻りこちらを警戒するように見られる理由が思い当たらない。なかなかなつかないペットの犬か猫でも見ている気分だ。
「どうしたんだよ二人して」
声をかけるとルークがまたちらりとアッシュを見て、アッシュが睨み返した途端ルークはびくっと目をつむり、それから目を開けて頬を膨らませた。まるで声もなしに喧嘩しているようだ。これもたまにあることだったのでようやく見慣れてきた。
「とにかく、グランコクマはだめだ。行くならピクニックていどにしとくんだな」
「ぴくにっく?それも行ったことない!ぴくにっくいこうアッシュ」
「すきにしろ」
「やったぁ!」
「え…ーっと?アッシュ?」
「行くならピクニックだ」
「ああ、いや、ピクニックでもいいけどな…じゃあ今度俺一人でグランコクマ行かなきゃだな」
「…るすばんは出来る」
「わかったわかった」
何故か意地でもグランコクマに行きたがらないアッシュに言いくるめられたルークはすっかりピクニック気分で、それを断るわけにもいかずグランコクマへは一人で行くことになった。ジェイドと会いに行く時に連れていこうと思っていたのだが、まさかアッシュはジェイドが好きそうで無かったから会うのを避けたかったのだろうか。真相はわからないが。
「じゃあ、ピクニックはサクラが咲いた日にしようか。サクラの花びらが舞ってとても綺麗なんだ。ピクニックと言うより花見になるけどな」
「花見…」
「はなみー?」
「花を見ながら食べたり飲んだりするんだ。案外楽しいぞ?」
「おおー…!?はなみ!はなみすごい?」
「うーんと、まあそうだな。花見はすごいぞ!」
「すごい!!はなみすごい!」
「うるせぇ」
「あうっ」
アッシュの(物理的な)突っ込みによりルークの暴走も一時止み、大人しくなった二人に邪魔したなと言って予定を立てに自室に行く。時計を見ると午後5時、そろそろ夕食の準備が始まるころだろうか。また後で、と手を振るとルークは思いきり振り返してきて、アッシュはああとだけ言った。双子のくせに性格は真逆で、なのに二人が揃っているように見えるのは何故かは、未だにわからない。
20140309
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