だらだら仲良し赤毛
2017/07/07 07:58





とくにすることがない。公務は一旦区切りがつき、休みをもらっていた。仕事ばかりしていたアッシュには、暇の弄び方がわからなかった。なので近くにあった新聞を読んでいる。これも作業的なもので、自分はただ情報を吸収しているに過ぎなかった。

「アッシュ!また新聞読んでんのか?」

どたばたと忙しげに部屋に入ってきた、弟と言うことになっているレプリカルーク。と言っても複製品だったのは昔の話であり、今は第七音素だけで構成されているわけではないのだ。完全な人の音素で出来ているわけでも無いのだが。こいつが近くで煩くするのにも慣れてきた今日この頃。

「煩ぇ。何処行ってたんだ」
「おやつ貰ってきた!俺はザッハトルテで、アッシュのはシナモンきいたアップルパイ!」
「む…」

アップルパイと聞き、新聞を置く。何度食べても飽きない味、香るシナモン、歯ごたえの良い林檎。流石王族のシェフだ。ここに戻って最初に出されたフルーツを使ったデザートで、素で美味しいと思った。それがルークにも伝わっていたのか、"おやつ"と称してよく持ってくる。だがそれを素直に喜べるはずもなく、仕方ないと言うようにルークから皿を奪った。上にかけられている砂糖がパイの焼き色を良く見せている。

「俺ベッドで食べるな」
「…好きにしろ」
「やった!」

また葉っぱが乗ってるだの文句を言い近くの屑籠にミントを捨てる。多少行儀が悪いと思うが、もうこぼしやしないしまぁいいかと放っておく。随分自分も甘くなったものだ。後から使用人達が余りのパイやケーキを持ってくることだろう。

「やっぱチョコ好き!上にかかってる方もすきー!」

語尾にハートマークでも付きそうに食べながら喋るルーク。それはそっちのけで一人アップルパイでご満悦なアッシュ。2年前までは誰が想像しただろうか。同じ部屋でデザートを口に含み笑い合う二人を。


「げ、アッシュはやっ」
「…うるせぇチョコなんて甘ったるいモノは胸にたまると少しは学べ」
「べ、べつに!わかってるって。そういうアッシュのもそこそこ甘いじゃん」
「…そんなことはない」
「うそつき!一口頂戴」

あーんと鳥のヒナらしく口を開け催促をするルーク。親鳥−アッシュは、ルークの持っている食べかけのケーキを皿ごと奪い取り、それとトレードで小さく一口分を分け与えた。対価は自分の感覚だともっと多いのだが、生憎チョコレートケーキをそこまで沢山食べれるわけではないので、皿に乗るサイズで妥協したのだ。ひっそりと、食べきれないと駄々こねるルークの負担を減らしてやろうとも思っているのは絶対に言ってやらないが。

「んーあま。同じぐらいだと思うんだけどなー…。つーか俺の返せ」
「断る。貰えただけでも感謝しろ。コレは対価だ」

そう言ってルークの目の前で次々と腹におさめてしまう。俺のザッハトルテ!とも聞こえるがそれも無視。皿の上のケーキが無くなると皿をポイとルークの方へ投げる。簡単にキャッチされるが。

「ひでーのアッシュぅ…」
「俺からコレを取ろうとするのが悪い。自業自得だな」

ハッと鼻で笑うと、きょとんとした阿呆面でルークはこちらを見る。

「アッシュ…そんなにアップルパイ好きなんだ」
「…はぁ!?なっ、違っ」
「だって…取ろうとするとか言うし…くく」
「笑うな!煩い!!〜〜〜っくそ!」
「あっ痛っギブ!痛いアッシュごめんって!!」

ケタケタと笑いだしたルークに一気に怒りと恥じらいがわいてきて、自分の皿を置きルークの右手を腕を捻る。背中に回った腕からの痛みにルークは声を上げるがそれも無視し、結局ルークが涙声になるまで捻りあげていた。

「くあーっ痛ぇ…」
「ざまァみろ」
「ひでぇの…」



20140211




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