君しか見えない の続き
2017/01/23 14:18





「アッシュ、お腹空いてないか?飯にしようと思うんだけど、いつ食べたかわかんないからさ。まあ明日からは同じ時間に食べるんだけどな!」


相変わらず変わらないテンションで話かけてくるルークをアッシュはシカトする。にこにこと尽きない笑みを浮かべて然り気無く恐ろしいことを言っているレプリカに警戒を解けるはずもなく、腕も解かれない状態で黙りこむことしか出来なかった。未だこの現状を理解することすら難しい。

「アッシュ、聞いてる?」
「まあ暫くは何言っても無駄だろ。諦めな」
「嫌。ガイは別にいいかもしれねーけど」
「…そろそろ報酬が欲しいんだが、ご主人様?」
「あーそうだった」

一人掛けソファに座るルークの前にガイが屈む。ルークの手を包んで顔を近づけると、ルークも顔を近づけた。ガイの頭でアッシュには何をしたか見えなかったが、その動作が与えた衝撃は大きかった。


「な………っ」

「ん、思ってたよりなんともないな」
「俺は今すぐトイレに行きたい気分だよ」
「あーあー行ってこいよ腹減ってるから早めに」


耳をふさいでこれ以上は聞きたくないと言わんばかりのポーズでガイを追い払うルーク。アッシュはガイの言っている意味がわからないはずもなく、開いた口が塞がらない。しかもルークはそれを軽くあしらっている。それは二人が前からそういう関係だからとしか思えなかった。

「…レプリカ」
「なにアッシュ!」
「お前とガイは、…そういう関係なのか」
「そういう…って、え、あ違うってば!俺はアッシュが好きだから」
「………」
「あれはアッシュ連れてきてもらうためにするって言ったからしただけだし。大丈夫口はアッシュとするためにとってるから!」

ガイが部屋を出て、これだけは確認せねばと口を開けばすごくいい笑顔でそんなことを言われ吐き気しかしない、とアッシュは思った。予想するに多分キスだろうが、それひとつ(しかも口じゃない)でトイレに行きたくなるぐらいに興奮するガイを後から気色悪いと思えた。どちらにしてもこの二人はおかしい。

「で、アッシュ。お腹空いてないか?」
「…………」
「俺としてはエビグラタンとか食べたいんだけどアッシュがエビ嫌いだったら俺我慢しようと思うんだ。でも俺ら同位体だし好きなもの一緒かなーなんて俺は思ってたり…」
「いらん」
「で、やっぱり…って、いらない!?なんで」
「こんな状況で敵から出された飯に手をつける馬鹿がいるとてめぇは思ってんのか?」
「てき………?誰が?」

全くわからないと言う様子で瞬きを繰り返すルーク。アッシュに取ってはたかが数回助太刀をしただけと思っていても、ルークは助けにきてくれた時点で仲間だと思っていた。そうでなくとも、普段から情報をやり取りし同じ目的で動いている、紛れもない仲間だと。それにルークが"アッシュ"を敵だと認識するはずが無かった。大好きな大好きなオリジナルを。

「てめぇら以外に誰がいる」
「あー…、なるほど!ツンツンなアッシュもかわいいけどデレてくれると嬉しいな」
「……はあ?」
「お腹空いてるの恥ずかしかったんだな。うんうん。大丈夫、ガイ料理は上手いから。本当は俺がつくってあげたいんだけどアッシュに不味いもの食わせるわけにいかないしさ。上手くなったらアッシュに毎日おいしいご飯つくってあげるから」

話が噛み合わなすぎてアッシュには何がなんだかわからなくなって来ていた。ただわかるのは自分のレプリカの脳に大いに問題があるということぐらいだ。



20140110




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